漫然とサラリーマンを続けるだけでは「億万長者」にはなれない。雑誌「プレジデント」(2017年8月14日号)の特集「億万長者入門」では、5つの方法で富を手に入れた5人にそれぞれの方法論を聞いた。第4回はDeNA共同創業者の川田尚吾氏が語る「エンジェル投資」の極意について――。

「自分がプロの投資家になろう」

ベンチャー投資を始めて9年になります。1999年に南場智子さんと共同で創業したディー・エヌ・エー(DeNA)が、2008年に東証1部に指定替えになったのを機に非常勤になり、いずれやりたいと思っていた会社投資の道に入ったのです。

DeNA共同創業者 川田 尚吾氏

これまでに30社余りに投資してきました。基本的には自分の勘が働くIT・ネット系ベンチャーを対象に、スタートアップの段階から資金を入れています。いわゆる“エンジェル投資”で、投資金額は1社当たり500万~数千万円。その時点で私が外部最大の出資者になるような案件を重視しています。他の投資家とシンジケートを組むこともあります。

実績として、インターネットサービスを手がける「フリークアウト」と「はてな」の2社が株式を公開し、ほかにも企業価値を認められM&A(買収・合併)に漕ぎ着けて保有していた株式すべてを買い取ってもらった会社が2つあります。現在のところ投資金額に対するリターンは、プラスで推移している状況です。

そもそも投資家になろうと考えた背景には、大学時代に学生ベンチャーに関わっていたという体験があります。80年代の終わりから90年代初頭の頃であり、バブル全盛期でお金は余っていたはずなのですが、銀行は学生にお金を貸してくれません。ベンチャーキャピタル(VC)にしても、出資の前提条件は担保となる土地の保有というケースもありました。そのため学生ベンチャー起業家たちは資金繰りに困ると、何枚もクレジットカードを作ってカードローンに頼っていたのです。

しかし、当時から米国は違っていました。将来有望な技術があると資本家やVCが着目し、「テクノロジー×資本主義」という形でマネーが付き、ベンチャーが続々と創出されるというダイナミズムが生まれていました。一方で、日本にはそうした「真の資本家」「プロの投資家」が存在していませんでした。そして、20歳のときに学生ベンチャーで挫折した私は、「それなら自分がプロの投資家になろう」と心に誓ったのです。