官房長官の定例記者会見に注目が集まる

自民党への迂回献金をめぐる「日本歯科医師連盟事件」では新聞報道をきっかけに政治家などの逮捕者が出た。この大スクープを2004年に報じたのは東京新聞入社4年目、望月衣塑子記者だった。

望月衣塑子(もちづき・いそこ)
1975年、東京都生まれ。慶應大卒。2000年に東京・中日新聞に入社し、これまでに地方県警、東京地検特捜部などを担当。武器輸出や軍学共同の取材にも注力してきた。著書に『武器輸出と日本企業』など。

一連の捜査主体であった東京地検特捜部へは、取り扱う事件の社会的反響の大きさから、各新聞社はエース記者を送り込む。全国紙のベテラン記者を地方紙の4年生記者が出し抜いたことにもマスコミ関係者は驚かされたことだろう。

望月記者が今年6月から菅義偉官房長官の定例記者会見に出席しだすと、世間で話題になった。安倍晋三総理への「忖度」があったと疑われる加計学園問題などについて、質問を繰り返す彼女の一挙手一投足に国民が注目した。

会見で菅氏から出てくる回答はほぼ「ゼロ」。それでも果敢に攻める背景には地方の事件記者時代に言われた言葉がある。

「“夜討ち朝駆け”を続けた警察官からある日『東京新聞だから君に情報を教えるわけではない。君が事件に対して情熱を持っているからだ』と重要な情報を私だけに教えてもらったことがありました。その刑事も人一倍、捜査に情熱を注ぐ人でしたから自分の熱意が伝わったのかとうれしくて。最後に人を動かすのはパッションなのではと思ったのです。菅さんにそれが伝わるかはわかりませんが(笑)」