いま「介護離職」が社会問題になっている。今年リクルートワークス研究所が全国4.8万人の「労働実態」を調査した結果、介護離職をした人は離職から2年後も半数以上が復職できていないことがわかった。なぜ復職が困難なのか。また離職しなくても仕事を続けられるようにするためには、なにが必要なのか――。

介護と仕事の両立を達成するために必要なこととは

誰もが少なからず不安を抱えながら働いているのではないか。近い将来、親の介護が必要になったとき、仕事との両立は可能なのだろうか、と。かつては、親の介護は兄弟姉妹で分担できた。そして、その役割の多くを専業主婦が担ってきた。そのため、家計を担う夫が、親の介護によって働き方を大きく見直す必要性に迫られることは少なかった。

しかし、少子化の進む中、介護を分担できる兄弟姉妹がいない場合もあり、また、女性の社会進出が進んだことから、妻が働いているケースも多い。他方で、一生涯結婚しない男女も増える昨今、介護をパートナーに頼ることができないひとも増えている。

超高齢化社会に突入し、仕事と介護の両立を諦めて、離職するひとの数が増える可能性がある。一億総活躍社会の実現を目指して、総理を議長としてまとめられた「働き方改革実行計画」(2017年3月28日)でも、子育て・介護と仕事の両立を一つの重点テーマと位置づけ、2020年までに「介護施設やサービスが利用できないことを理由とする介護離職をなくす」という目標を掲げている。

いったい、介護によってどれくらいの人が離職しているのか、また、離職したら、その後の働き方はどうなっているのか。本稿では、もはや、働く人にとってひとごとではなくなった、介護による離職の実態を把握したうえで、介護と仕事を両立するための望ましい働き方について考えてみたい。

もはや女性に限らない、介護離職

まず、介護離職の規模を把握しよう。「全国就業実態パネル調査2017」(リクルートワークス研究所)によると、この5年間(2012年から2016年)に介護を理由に離職した人は推定約54.1万人にのぼる。そして、その内訳は40代が17.9%、50代が38.3%、60代が16.2%と、40代以上がほとんどであり、また、全体のうち3割が男性である。介護を理由に離職するひとは、組織でマネジメントを担当する重要な立場の年齢層であること、そして、かつてのように、女性に限らないことがわかる。