「本当は教えたくないのですが……」と、人事のウラを知り尽くしたコンサルタント・平康慶浩氏は語る。毎年、査定前に提出を求められる人事考課シート。成果を高めにアピールすべきか、謙虚に控えめにすべきか。人事評価を上方修正できるものなら、そうしたい。なんと心理学に基づく「正しい書き方」があった――。

実際の自己評価よりも1段階高くつけよう

人事考課シートは、上司と部下とのコミュニケーションツールです。したがって、上司の心理を上手に利用すれば、評価は上がりやすくなります。

(PIXTA=写真)

行動心理学では、上司が部下を評価する際に、部下の自己評価に引きずられる「アンカリング」が起こると考えられています。アンカリングとは、「最初に示された基準が、その後の判断に影響を及ぼす」という人間が本来持っている癖のことです。

例えば、5段階評価で、部下が自己評価を3にしたとします。すると上司は、3を基準にして、2から4の間で評価する傾向があります。もし、部下が自己評価を4にすれば、上司は4を基準に3から5の間で評価する傾向が強まります。部下の行動をすべて把握している上司は少ないでしょうから、多くの上司は部下の評価に自信がありません。部下の自己評価に引きずられやすいとも言えます。

したがって、自己評価を高めにすると、上司の評価も高くなることが期待できます。とはいえ、自己評価があまりにも高すぎると、上司から「自分を客観的に見られない人」と受け止められてしまうリスクもあります。アンカリング効果をねらうなら、実際の自己評価よりも1段階高くつける程度に留めておくとよいでしょう。

自己評価が記述式の場合は、「何を達成・実現したか」という結果をしっかりと書いてアピールすることが大切です。期初に設定した目標を達成できた場合は、達成したことだけでなく、自分自身の成長もアピールしましょう。自分がどのように成長して、昨期とはどこが変わったのか。例えば、「初めてのお客様とのコミュニケーションは苦手でしたが、今期はその弱みを克服し、飛び込み営業でも会話ができるようになりました。その結果、新規開拓によって売り上げ目標を達成できました」というように、売り上げを達成したことだけでなく、さりげなく自分自身の成長に触れておくと、上司に「去年より高く評価しておいたほうがいいかな」と心理的プレッシャーを与えることができます。