まず名乗りを上げたのは京都

定年後、なじみの土地で悠々自適に過ごそうと思っていたら、突如として移住を持ちかけられた。しかし、誘いの主は知らないことはないが、という程度。あなたなら、この誘いをどう受け止めるだろうか。

特例法公布後も精力的に公務に取り組まれる両陛下。(時事通信フォト=写真)

6月9日、天皇陛下の退位を実現する特例法が成立した。これをきっかけに、「上皇陛下」のお住まいの誘致合戦がにわかに巻き起こっている。

まず名乗りを上げたのは京都。門川大作市長が12日、「京都における上皇の滞在や宮中行事の実施に関し、具体的にどういう可能性があるのか、知事や各界の有識者らと近々に再び協議を行い、早急に国に要望したい」(京都新聞6月12日)と発言。

14日には、荒井正吾奈良県知事が「奈良に離宮をという気持ちはあります」と、こちらも誘致を検討していることを明らかにした。「天皇陛下が奈良を訪問した際に、『父祖の地としてゆかりを感じている』と話されたことや、明治期に飛火野周辺に離宮を作る計画があったことから、調査するよう指示した」(毎日放送6月14日)という。

京都はさらに、追撃。「地域政党の京都党は15日、天皇陛下が退位後に京都へ居住してもらうように願う署名活動を行い、1万745筆集まったと発表し」(京都新聞6月15日)、翌16日に政府へ提出した。

京都にしろ、奈良にしろ、あまりに唐突な発表に、世間の反応は冷たい。

天皇陛下が昨年8月に表明された「お言葉」を振り返ってみよう。

「何年か前のことになりますが、2度の外科手術を受け、加えて高齢による体力の低下を覚えるようになった頃から、これから先、従来のように重い務めを果たすことが困難になった場合、どのように身を処していくことが、国にとり、国民にとり、また、私のあとを歩む皇族にとり良いことであるかにつき、考えるようになりました」

ここで冒頭の問いに戻る。高齢で体調に不安を覚えていても、あなたは遠方への移住の誘いに乗るだろうか。