世界中で「自動運転車」が公道を走り始めている。技術が進めば、格安の「無人タクシー」が街中を走り回るようになる。そのとき「46%の自動車が不要になる」という試算がある。多くの人がクルマを保有しなくなったとき、完成車メーカーは生き残れるだろうか。ボストンで自動運転の実証実験に取り組んでいるコンサルティング会社が最新状況を踏まえて考察する――。(後編、全2回)

過疎地では自治体が、都市部ではBtoBが先導する

自動運転車がもたらすメリットは、ドライバーの負担が減ることばかりではない。社会全体の交通システムにも大きな変革をもたらす。自動運転車を含む複合的な交通システムの将来について、ボストン コンサルティング グループ(BCG)は世界経済フォーラム(WEF)と共同で以下の4つのシナリオを作り、その影響を分析している(図表1)。

シナリオ1:プレミアムカーとして普及
シナリオ2:幅広く普及
シナリオ3:ロボタクシー(自動運転車を使ったタクシー)革命が起こる
シナリオ4:ライドシェア(1つの自動運転車を複数人で共有する)×ロボタクシーで普及していく

 このうちハードルは高いものの、そのメリットが最大化されるのはシナリオ4だ。しかしながら、現実的に起こりうるのはシナリオ3のロボタクシー革命のシナリオではないだろうか。(シミュレーション結果の動画はこちら→https://youtu.be/FcFsFDUwe4s)。

「自動運転車の普及はどこから進むのか?」という問いに完全な答えはないが、いくつかの切り口が考えられる。一つは「B2B対B2C」という観点。もう一つは、「都市対地方」という観点である。

一般論として、新技術は比較的コントロールされた環境下にあり、またその経済的メリットが明確なB2Bから普及が始まることが多い。例えば、日本でも労働力不足が問題となっている物流トラックにおいて、普及が進むことは容易に想像できる。宅配大手のヤマト運輸は、DeNAと共同で神奈川県藤沢市の一部で「ロボネコヤマト」の実証実験を始めたことが報じられている。長距離輸送も含め、物流業界ではドライバー不足が深刻だ。人手不足の解消を移民で解決するのか、自動運転などの技術で解決するのかは政治的判断が必要とされるテーマだが、いずれにせよ、社会に与えるインパクトは大きいはずだ。