背の高い上司が見せたパーティーでの気配り

会食では入り口から遠い上座に目上の人に座ってもらい、自分は入り口に近い下座に座るのがマナーです。では、お手洗いの場合はどうか?

わが社の社員なら、おそらく手前を人に譲るでしょう。会食と逆ですが、入り口から近いところは忙しい人のためのもの。急いでいないなら、自分は奥を使ったほうが相手に失礼がなく、かつ合理的です。

野村HDグループCEO 永井浩二氏

昔話ですが、そのことを教えてくれたのは、私が事業法人一部にきたころ常任顧問を務めていた鈴木政志(元会長)でした。鈴木は会長になっても「昔のクセが直らない」と言って奥を使っていました。じつは私も同じで、いまだに手前を使うのは気が引ける。鈴木を見倣っているうちに、習慣としてすっかり身についたようです。

鈴木からは、ほかにもいろいろなことを叩きこまれました。ある会食のときです。お客様が4~5人、こちらも社長や会長含めて4~5人で、料亭で会食しました。芸者さんが入って場が盛り上がり、私も端っこで楽しく飲んでいました。すると、会食の後、こっぴどく叱られました。

「俺は自分がお酒を飲んでいても、お客様の盃にどれくらいお酒が入っているのか、つねにチェックしている。本来、それは担当者であるキミの仕事だ。接待で自分が楽しんでどうする!」

まったくその通りです。お客様はもっと飲みたいのか、そうでないのか。時間を気にしているのか、していないのか。しているなら、料理が出てくるスピードは適切なのか。そこまで気を配って舞台を回すのが担当者の役割です。それからは、全体に目を配るようになりました。