「ゆとり世代」に代表される若手の社員は、いくら叱咤激励しても重い腰を上げようとしない。どうしたら彼らのやる気にスイッチが入るのか。3人の識者にスポーツ心理学、メンタルヘルス、脳科学の観点から聞いた――。
▼部下をやる気にさせる3人の達人

(左)枝川義邦(えだがわ・よしくに)
早稲田大学研究戦略センター教授/早稲田大学先端科学・健康医療融合研究機構および高等研究所准教授などを経て現職。脳科学を専門とし、人材を生かした組織の研究も行う。

(中)新井淳子(あらい・じゅんこ)
オフィスフローラン社長/全国展開の料理教室で店長、人事部を経験。現在は社会保険労務士として、人事相談、メンタルヘルスなど労務トラブルに対応している。

(右)大儀見浩介(おおぎみ・こうすけ)
メンタリスタ社長/東海大学進学後、応用スポーツ心理学(メンタルトレーニング)を学ぶ。現在はスポーツやビジネスなど、さまざまな分野で指導を行っている。


若い世代の人たちは自信がないだけ

やる気が見えないし、感じられない。そんな若手の“問題部下”を抱えて、苦悩している中間管理職は少なくない。そうしたなか、いまだにビジネスの現場で幅を利かせているのが、「もっとやる気を出せ」といった一方的な叱咤激励である。

それにより、人格を否定されたと思い、極度に落ち込んだり、うつに陥って退職したりする。一体どうしたら問題部下の“やる気スイッチ”が入るのか――。単なる精神論ではなく、心理学、それも実際にビジネスの現場で活用されているスポーツ心理学(メンタルトレーニング)や、最先端の脳科学の研究結果から解き明かしていきたい。

まず、心理学を活用しながら企業の人材育成やスキルアップのコンサルティングを手がけるオフィスフローラン社長の新井淳子氏は、「若い世代の人たちは自信がないだけ。ぜんぜんやる気がないように見える部下でも、いろいろ話を聞くと、成功体験がなく経験値も低いので不安なだけだということがわかってきます」と、上司と部下の間の意識のズレを指摘する。

早稲田大学研究戦略センター教授で脳科学が専門の枝川義邦氏も、若い世代がやる気がないように見えるのは、世代間の感覚の違い、意識のギャップに理由があると次のように指摘する。

「マーケティングでいう『ウォンツ』、つまり具体的に手に入れたいと思うものが多様化しています。かつては『いつかはクラウン』が成り立ちました。カローラからスタートして、課長、部長と出世したらクラウンに乗るといったように“モノサシ”は1本でした。でも、いまはそのモノサシが何本もあります。それだけ管理職世代の人たちとのギャップが広がり、若い人のウォンツを突くのは難しくなっています」

では、そうした世代間ギャップを埋め、彼らのやる気スイッチを入れるにはどうしたらよいのだろう。新井氏は相手を「認める」ことによって、まず有能感を植え付け、信頼関係を構築していくことが大切だという。

「よく叱るより褒めろといいますが、褒めてもモチベーションが落ちないだけで、むしろ『これくらいでいいや』と現状で満足して、成長が止まってしまいます。一方、いまの若い人は1番でなくてもいいから、認めてほしいという承認欲求が強いのです。実際に認められると、自己肯定感がすごく高まって、自分に有能感が生まれます」