転職は、その人の人間性があらわになる人生の岐路だ。幾多の人間模様を見てきた転職のプロたちに、成功する人、失敗する人のメンタリティを聞いた。慎重な人と能天気な人。成功するのはどっちか――。
▼参加した人
ヘッドハンター(A:30代)
主に部門長以上の経営者やエンジニア、スペシャリストのヘッドハンティングを担ってきた。現在、独立して組織戦略のコンサルティングを兼ねる。
転職コンサルタント(B:50代)
これまで数千人、数百社の間の橋渡しを手がけてきた転職のプロフェッショナル。慣れない転職活動を行う中高年に親身になって指導・アドバイスを行う。
ヘッドハンター(C:40代)
ヘッドハンティングのファームに所属。製造業と情報通信業を中心に、幹部や現場のマネジャークラスの即戦力人材をクライアントに多数紹介。

“郷に入れば郷に従う”人は採用されるか

――能天気なぐらいの人のほうが、転職もスムーズで出世もするのでは?

【A】いや、前向きでも慎重でも、能天気だったり、弱気で鈍重すぎたりと極端なのはNG。極端に前向きだと、例えば勝手に何でも進めてしまい、報告、連絡、相談などをすっ飛ばして突き進み、しまいには周囲から「KYだね」と言われてもどこ吹く風。“スーパー・ポジティブ・シンキング”で、その自覚すらないこともある(苦笑)。ちっとも悪びれずに、「今までそうやってきた」と言い切る人がいるぐらいです。雇う側からすれば、こういうのはある意味失敗例かもしれません。

【B】そうですよね、たしかに前向きすぎて、何でも「それやりましょう」と言う人はいます(笑)。でも、やはり度がすぎれば、転職先の会社も「それで本当に大丈夫なの?」と不安な気持ちになります。どんな仕事も、常に不確定なものに向き合うわけですから、ある種の前向きさも必要です。が、確認しなきゃいけないものは、やはり慎重にやるべき。イケイケドンドンがすぎて、押さえるべきところが抜けてしまえば、失敗につながります。

【C】大手メーカーの50代役員で、転職時に「タイトル(肩書)、ブランド、年収を落としたくない」と言う方がいました。こういうタイプは、前向きと言えばそうかもしれませんが、常に高望みで欲に限りがない感じです。でも実際は世情が厳しくなったこともあって、市場価値には合致しませんでした。

こういう方は、表向きは「チームワークを大切にします。部下から慕われています」という雰囲気を醸し出しますが、我々エージェントには「自分だけが成功したい」という意識の強さばかりが見えてしまうんです。別個でいい話があれば、すぐにそちらに移ってしまうかもしれないと思ってしまう。

――難しいですね。逆に、慎重すぎた失敗例はどんなものでしょう?

【A】そういう人たちの中に、“郷に入れば郷に従え”というタイプがいます。転職先の組織、カルチャー、やり方を慮り、仕組みに順応しようとする人。

一見、いい感じなんですが、変化や改革を求めて中途採用を行っている企業も多いから、中に染まって金太郎飴と化してしまっては、わざわざ外から採った意味がないわけで。

【B】すぐ思い出すのは、何でもかんでも確認しないと気が済まない、慎重すぎる40代の例。面接に臨んだとき、態度、表情、言葉遣いにそれが出てしまった。「就業時間や残業時間は?」から始まって、あれこれ細かくチェックしすぎたみたいです。企業側も「うちではちょっと……」と断ってきました。

【C】大人しくて控えめな人は、よくお見かけします。大風呂敷を広げないのはいいんですが、自分のよさをもっとアピールしないと、相手企業は「この人、ちゃんと頑張れるのかな……」と二の足を踏んでしまう。