月~金の全力疾走をノートとの一体化で可能に

<strong>北川真衣</strong>●1983年、東京都生まれ。英国の国立大学卒。チャネル開発部にて、創育事業、e-コマースなど新しい分野の拡大を担当。入社当時は取扱店0だった創育商品も、次々に販路を拡大中。
北川真衣●1983年、東京都生まれ。英国の国立大学卒。チャネル開発部にて、創育事業、e-コマースなど新しい分野の拡大を担当。入社当時は取扱店0だった創育商品も、次々に販路を拡大中。

それは、英国仕込みの「1週間PDCAサイクル」の仕事術だった――。日本の高校を卒業後、北川真衣さんが進学したのは英国の国立大学(政治学部)。「民主主義」「交渉術」といった講義では、それぞれ週初めに教授からレクチャーを受け、週半ばに小集団のセミナーで“深掘り”した後、週終わりに教授との一対一のチュートリアル(個別指導)に臨む。論文や試験で一つでも単位を落とせば退学決定(留年なし)の大学。授業についていくため、死に物狂いで勉強するうちに、自然と「週完結」の学習習慣が身についた。

そのリズムが今、仕事に生きている。

北川さんの主な業務は、大手ネット通販への販売促進や、子供向け創育事業の規模拡大。見開きで1週間単位のスケジュール帳を肌身離さず持ち歩くのは、仕事を極力「その週で終える」ための“組み立て”に必須なツールだからだ。

「月曜、火曜は“降ってきた”仕事や前週から続く案件などを猛ダッシュで処理します。同時にその週の木曜や金曜に設定するようにしている商談のための下準備や社内調整も。これらはいわば予習ですが、強く心がけているのは商談結果を、週内に必ず上司へフィードバックすること。すぐ復習をして重要ポイントを整理するとともに、発見した課題の対策を上司と一緒に立てておくんです」

つまり、週間手帳を傍らに、週前半は「PDCA」のP(計画)の過程を、後半はDCA(実行・評価・改善)を一気にこなす。「仕事の締め切りは金曜夕方」と決め、とにかく翌週に仕事を繰り越さないように努める。商談の内容がいくらホットでも、週末をはさめば熱も若干冷めてしまう。熱いうちに社内調整に動けば、週内か遅くとも翌週早々、商談相手に素早く対応できる。仕事の効率やスピード感がまるで違ってくるのだ。

「金曜に業務を終えたときの、あの達成感。そして週末は仕事のことを何も考えずに過ごせるのが最高に気分がいい」

カバーノートの左側にスケジュール帳を、右側にノートを差し込むことで、手帳とノートを一体化。材質がしっかりしているので、立ちながらの商談でも書き込める。

カバーノートの左側にスケジュール帳を、右側にノートを差し込むことで、手帳とノートを一体化。材質がしっかりしているので、立ちながらの商談でも書き込める。

マンスリーのスケジュール帳では、このPDCAサイクルが間延びする。「金曜までに」という気持ちが薄いため、ダラダラしてしまうのだ。北川さんはこの「締め切り日」から逆算して、翌日すべきことを退社前に付せん紙にリストアップする。無意識のうちに仕事の段取りをしてから帰宅するようなしくみができた。

スケジュール帳とセットになっているメモ帳には、商談や顧客との会話の中で出てきた情報を手際よく書き留め、ときにはひらめいたアイデアをイラストで残すことも多い。入社3年目。「今はただ、この1週間を全速力で駆け抜けるのみ。その積み重ねです」と屈託なく笑う。

取材中、スケジュール帳を何度もぺらぺらめくって「ああ、この週は(忙しくて)死んだなぁ」などと披露する。

そこには、何年も使い込まれた辞書のように手あかがついている。「できるだけ手帳を汚く使いたいんです」。それは「1週間PDCA」で毎週毎週を突っ走ってきた証拠であり、彼女の仕事への誠実さの表れでもあるように見えた。