安倍晋三首相が衆議院の解散に打って出た。野党再編の台風の目となった「希望の党」は230人以上の立候補者をそろえ「安倍一強の打破」を掲げる。今回の選挙で国民は何に注目すればいいのか。安倍首相を長年取材し、首相の表も裏も知る産経新聞・阿比留瑠比編集委員と、「森友」「加計」問題の政府責任を厳しく追及してきた東京新聞・望月衣塑子記者に聞いた――。

▼解散に大義はあるのか

【東京新聞・望月衣塑子記者】今回の選挙は大義がない選挙です。郵政解散は郵政の自由化を掲げ、それに関して選挙を通じて民意を問うというものでしたし、野田佳彦元首相も解散で社会保障と税の一体改革の是非を国民に問いました。9月下旬の共同通信の世論調査では64.3%がこの時期の解散に反対しており、これは身勝手な解散を断行した政権への不信感の表れです。

阿比留瑠比●1966年生まれ。福岡県出身。早稲田大卒。90年に産経新聞社に入社し、仙台総局、文化部、社会部を経て、98年から政治部。現在は産経新聞論説委員兼政治部編集委員。

安倍晋三首相は森友・加計学園問題で「説明責任を果たす」と国民に約束しました。野党が「ならば臨時国会を召集せよ」と言い続け、ようやく9月にきっちり追及することになっていました。このタイミングだけを見れば「森友」「加計」からの逃げじゃないかと疑ってしまいます。最低限の代表質問や衆議院調査局の調査もすっ飛ばし冒頭解散をしましたが、首相の独断で決めていたかのような印象があります。

【産経新聞・阿比留瑠比編集委員】野党などは「今回の選挙は大義がない」と主張していますが、そのこと自体が的外れでナンセンスです。衆議院議員というのは任期満了しようと4年に一度は選挙をする。そのときに、いちいち大義が必要なのか。過去の衆議院選挙で、大義があった選挙ってあるんですか。そのことを考えてほしいです。

小泉純一郎元首相の郵政解散は、あれは自分がやりたい法案が衆議院では通ったけど、参議院で否決されたから衆議院を解散するという、めちゃくちゃな話でした。吉田茂元首相のバカヤロー解散、中曽根康弘元首相の死んだふり解散、佐藤栄作元首相の黒い霧解散にせよ、どこに大義なんてあったのでしょうか。大義のある選挙などこれまでなかった以上、それは難癖で、イメージを落とそうとしているだけです。