人手不足で活況に沸く日本の人材派遣業界。国内トップのリクルートホールディングス(HD)は海外でM&Aを進めてきたため、すでに海外部門の売上高が国内を上回っている。2020年、海外部門で1兆円を目指すなど、アデコなど世界のビッグ3を追う。なぜリクルートは圧倒的な国内トップ企業になったのか。『図解!業界地図2018年版』(プレジデント社)の著者が人材派遣業界を分析する。

人材派遣会社の創業者が自社株を売却

人材派遣業のパーソルホールディングス(HD)の創業者が、516億円分の自社株を売却した。17年2月から3月にかけて、テンプHDの株式2800万株(関連財団への寄付350万株を除く)を、1株1841~1937円で売却したのは、筆頭株主の篠原欣子氏だ。株数と株価から計算すると516億4078万円に相当する。

アパート建設大手の大東建託の創業オーナーが、自社株3678万株を1株5445円で売却し総額はおよそ2000億円に達したが、それに次ぐ規模といえよう。

テンプHDは、7月1日にパーソルHDに社名変更をし、新たなスタートを切っているが、ルーツは1973年創業のテンプスタッフ。その創業者である篠原欣子氏は、2016年6月に退任するまで、社長・会長として同グループを牽引。旧ピープルスタッフとの経営統合やインテリジェンス(現パーソルキャリア)の買収、アジアを中心とする海外事業の拡大など、売上高6000億円の企業グループに成長させた。

今年7月には、オーストラリアの人材サービス・メンテナンス事業大手のプログラムド・メンテナンス・サービスの全株式を約700億円で買収すると発表した。同社の売上高は約2300億円。連結決算に年間を通して加わるのは19年3月期だが、それでも18年3月期は売上高6773億円、当期純利益222億円を予想している。

国内2位のパーソルHDのはるか先をいくのが、リクルートHDだ。国内最大手のリクルートHDは、世界トップ3を形成しているアデコ(スイス)、ランスタッド(蘭)、マンパワー(米)に比べ、売上高こそやや劣るものの、営業利益率や本業によるキャッシュの創出力を示す営業キャッシュフロー(CF)はこれらを上回っているといってもいいだろう。