往年の大スターが勢ぞろい。舞台はゴージャスな老人ホーム。シルバー世代をターゲットにした異色の連続ドラマが誕生した背景、ヒットした理由を倉本聰さんに聞いてみた。

今年4月からテレビ朝日系で放映されている話題の連続ドラマ『やすらぎの郷』がいよいよフィナーレを迎える(9月29日最終回)。シニア層にターゲットを絞るという大胆な発想。このドラマは倉本聰さんの持ち込み企画だった。

「われわれ、年を取ると朝が早くなりましてね、5時過ぎには目が覚めてしまう。朝飯までやることがない。テレビをつけてもつまらない情報番組とテレビショッピングしかない。あの時間にちゃんとしたドラマを見られないのか……という声を同世代から随分聞いていて、そりゃそうだなと。老人のための老人による、記憶に残る番組を作りたいというのは最初からありました。

もともとは朝の番組として企画したものです。ゴールデンタイムは若者を主体にしているけれど、若者はネットに移っていてゴールデンタイムの視聴率がどんどん下がっている。でも、NHKの朝の連続テレビ小説は視聴率が高い。なぜ民放はそちらにターゲットを変えないのだろう。僕はテレビ局の怠慢と惰性でしかないと思うんです。シニア層を狙ったらちゃんと視聴率が取れるんじゃないかとテレビ朝日に持っていったら即断で乗ってくれたのですが、朝の番組枠というのは全国ネットでは取りにくいんですね」

朝の時間帯は地方局が独自の番組編成をしているケースが多く、民放では全国ネットのドラマ枠は成立しづらい。そこで昼の地上波と朝のBSで放映する形となった。

この企画に賛同して、過去の倉本ドラマを彩ってきた名優たちが続々と集結した。石坂浩二、浅丘ルリ子、有馬稲子、加賀まりこ、五月みどり、野際陽子、風吹ジュン、八千草薫……等々、往年の大スターたちが一堂に会することになった。

「こういう番組をやりたいんだと仲間に話していたら、みんな『それはいい、タダでも出る』と言って、どんどんスターが集まってきてくれたんです。ゴールデンタイムでもギャラでパンクしちゃうようなスターたちばかりなので、ギャラは一律の制限をかけて納得してもらって。でも、みんな、こういうドラマに飢えていたんでしょうね」

舞台はテレビ界に貢献した俳優やスタッフだけが入居できる老人ホーム。スターたちが本人のイメージそのままの役を演じているところも見どころだ。