ライフスタイルや住宅事情の変化から、若者の消費の中心は“モノ”から “サービス”へと移行しつつある。なかでも人気を集めているのが「ライブイベント」だ。各地のテーマパークが再評価され、伝統的な「祭り」も活況。大規模な集客を誇るイベントもどんどん増えている。若者の心をつかむライブイベントの条件とは――。

※以下は森永卓郎『森卓77言 超格差社会を生き抜くための経済の見方』(プレジデント社)から抜粋、再構成したものです。

都心部で断捨離が必要な本当の理由

2015年の国勢調査をみると、東京郊外の国立、所沢、松戸、平塚といった都市の人口が減少に転じています。これらの地域は、1970年代から80年代にさかんに住宅が建てられた地域です。一国一城の主になりたいと、無理をして、ようやく手に入れたマイホームなのですが、そうした世代の子供たちが、長い通勤時間を嫌って、いま東京都心部に新居を構えるようになっているのです。

もちろん、若い彼らの所得が高いわけではありません。しかも、東京都心部は東京オリンピックの影響で、不動産価格も家賃も高騰しています。その結果、彼らの住む家は、とても狭くなってしまっているのです。

そこで、狭い部屋をすこしでも広く使うため、彼らは断捨離を行い、消費の中心をモノではなく、イベントなどのサービスに移行させています。

いま消費不振が続いている一つの要因が、そうしたライフスタイル変化なのでしょう。そうなると、産業のあり方も当然大きく変わってきます。かつては、製造業は安定産業の代表選手でしたが、今後は確実にサービス産業へと重心が移っていきます。

「YOSAKOIソーラン祭り」は200万人が集まる

私は、NHKの「国民アンケートクイズ リアル日本人!」という番組に出演しているのですが、その番組が行ったインターネットのアンケートで、20代の若者に「正直なところ『会社を休んでもいいかなぁ』と思うときはどんなときですか?」という質問をしたところ、最も多かったのが、「好きなアーティストのライブ」という回答で、26%人がそう答えました。

大学で教えていて最近強く感じるのは、若者たちがライブやイベントに非常に大きな価値を置いているということです。ネット時代なのだから、ライブはネットで見ればよいではないかと思うのですが、事態は真逆です。ネット時代だからこそ、ネットに乗らないライブイベントが大きな価値を持つようになってきているのです。

例えば長野県の場合、歴史と伝統に支えられた大きなイベントがあります。なかでも諏訪大社の最大の行事である御柱祭は、日本三大奇祭の一つに数えられ、毎回多くの観光客を集めています。しかし、御柱祭が行われるのは寅と申の年だけ、つまり6年に一度だけしか開催されません。

たくさんの人でにぎわう善光寺の御開帳も、7年に一度だけです。歴史と伝統に裏付けられたイベントというのはそういうもので、だから集客時期が限られてしまうのです。