北朝鮮が核・ミサイル開発を加速させている。安倍晋三首相は9月21日、国連総会で金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長を「独裁者」と批判し、国際社会に圧力強化を呼びかけた。だが圧力で事態を打破できるだろうか。元「週刊現代」編集長の元木昌彦氏は、「北朝鮮情報はこの男に聞け」と一人の記者を名指しする。独裁国家の思惑をつかむために、有効な情報源とは――。
「週刊現代」(9/23・30号)の近藤大介氏(週刊現代編集次長)の署名記事「あの金正恩でも、嫁さん李雪主には頭が上がらない」。

北からの手紙「わが国に来ませんか」

1985年5月、私は北朝鮮・平壌にいた。

その年の初め東京の朝鮮総聯から「わが国に来ませんか」と誘われたからだ。たった一人で1ヵ月という条件はきつかったが、見てみたいという気持ちのほうが勝った。

モスクワ経由で入った平壌では数々のカルチャーショックを受けが、ここではそのことを書く紙幅はない。パスポートを取り上げられ、言葉もできない人間には、通訳にいわれるがまま動くしかなかった。

さまざまな楽器を見事に弾きこなす幼稚園児。幸せそうな高層アパートの若夫婦。世界一と彼らが豪語するオペラハウス。犬の刺し身などなど。

ひと月近く滞在する中で多くの北の要人たちと会ったが、名刺一枚くれず、結局、通訳以外の人脈をつくることはできなかった。北朝鮮取材の難しさをつくづく実感させられた。

だから私は、この男の北朝鮮情報はすごいと思う。近藤大介、『週刊現代』編集次長である。9月4日発売の『週刊現代』(9/16号)で「平壌の朝鮮労働党幹部インタビュー」を署名で書いている。

一読して、失礼な話だが、この内容が事実なら国際的大スクープであると、私が連載している週刊誌評に書いた。内容をかいつまんで紹介しよう(質問は私が約してある)。