「2020年の東京五輪までは大丈夫」。不動産についてそんな意見も目にするが、それは本当なのか。不動産コンサルタントの長嶋修氏は、ブランド力の高い「都心5区」は今後も安泰な一方、これまで人気だった田園都市線沿線では「『負け組』の物件が増える」と予測する。どういうことなのか――。

※以下は長嶋修『5年後に笑う不動産 マンションは足立区に買いなさい!』(ビジネス社)からの抜粋(一部改変)です。

将来性を支えるのは、一にも二にも立地

私は、今後日本の不動産市場は大幅に縮小し、「価値を維持する、あるいは価値が上がる不動産」「なだらかに下落し続ける不動産」「限りなく無価値になる、あるいはマイナス価値となる不動産」という三極に分かれると予測しています。

このうち、今後の見通しが明るい不動産は、とにかく「立地がよいもの」に限定されます。もともと、不動産は一にも二にも立地が重視されるものであり、急行が止まる主要駅に近いことや、街としてのブランド力が極めて高いエリア(東京であれば銀座など)にアクセスしやすいと、評価が高くなります。

人口減や都心回帰で、今は人気のエリアも価値がジリ貧に?(写真はイメージです)

しかし、これからはさらにエリアが限定され、東京都23区内でも勝ち組となるエリアは絞られてきます。東京以外だと、常に一定のニーズが発生し続ける京都などの一部ブランドエリアや、他の地域にない特色を打ち出しているエリアも、わずかながら存在します。こうした一部エリアは、今後も景気動向次第ではありますが、価値が落ちないか、値上がりするでしょう。

具体的に、特に有望なのは東京の都心3区・5区です。都心3区とは、千代田区、中央区、港区という超都心部を指していますが、これに新宿区、渋谷区を加えた都心5区までは、人口が急速に減少し続ける中でも変わらぬブランド力を維持し続け、「立地のいい場所にマイホームを買いたい」という実需のみならず、国内外の投資マネーも流入し続けることが想定されます。

実際、ここ数年の不動産市場の動きを振り返ってみると、2012年に民主党から自民党に政権交代が行われ、アベノミクス、黒田バズーカが発動し、景気は上向きになりました。株価の上昇からまもなく、首都圏のマンション価格は上昇し、不動産バブルの再来という報道を多数見聞きしました。しかし、実際には首都圏の全エリアでマンションが売れて、ダイナミックに値上がりしていたわけではありません。都心3区(千代田区・中央区・港区)では、中古マンション価格が160%近く上昇しましたが、東京都全体の上昇は140%程度にとどまり、近県の神奈川・埼玉・千葉では、120%上昇しただけでした。