アイデアが活発に出てくるような会議を開くには、どうすればいいのだろうか。『トイ・ストーリー』など人気アニメを数多くつくってきた米ピクサーは、会議を通じて作品を面白くしていくことで知られている。ピクサーの会議ではリーダーに対して批判的な意見も、どんどん出てくるという。なにがポイントなのだろうか――。

ピクサーの命綱「ブレイントラスト」

『トイ・ストーリー』や『モンスターズ・インク』『カーズ』など、世界的なヒット・アニメ作品を作り続けている映像制作会社のピクサーには、「ブレイントラスト会議」と呼ばれる問題解決のしくみがある。

「ブレイントラスト」は、ブレイン集団と考えて差し支えない。アメリカのルーズベルト大統領がニューディール政策を実施した際、政策ブレインとなった学者たちを「ブレイントラスト」と呼んで以降、一般的にも使われるようになった言葉だ。

ピクサーのブレイントラストは、もっぱらストーリーテリングに関わるブレイン集団を指す。監督経験者やプロデューサー、脚本家、ストーリー責任者など、社内でストーリーに関わるクリエイターたちが数カ月ごとに一堂に会し、製作中の映画について率直な意見を交換するのだ。

ピクサーは、ブレイントラスト会議を繰り返すことによって、優れた作品を生み続けてきた。ピクサーの共同創設者であり、現在も社長を務めるエド・キャットムルは、著書『ピクサー流創造するちから』(ダイヤモンド社)のなかで、どんなピクサー映画も「つくり始めは目も当てられないほどの『駄作』」と語っている。『レミーのおいしいレストラン』に対して、「ネズミが料理をする映画なんて、一歩まちがえば人を不快にさせるだけ」とは言い得て妙だ。

そのつまらない駄作を、面白くするのがブレイントラストの仕事というのだから、ピクサーの命綱といっても言い過ぎではないだろう。実際、同書で描かれる具体的なブレイントラストのやりとりを読むと、映画が進化していく様子がよくわかる。