「体育会系は就職に強い」。就職活動ではよくそう言われるが、はたして事実なのか。今回、プレジデント誌では、伊藤忠商事やキリン、日本航空など15の人気企業にアンケートとインタビューを実施し、約30の種目について調査を行った。その結果、人事部員も意識していなかった意外な事実が浮かび上がった――。

「体育会系」が就職に強い本当の理由

調査は、採用責任者と経営者のそれぞれを対象に実施。自身が所属していた部活動などプロフィールのほか、体育会系部活動の出身者が入社後に活躍している印象があるか否か、学生の採用面接での記憶に残ったエピソード、今春入社の学生の主な部活や成績などを回答してもらった。また、競技によって印象の違いがあるのかも探るため、野球やサッカー、ラグビー、山岳部、チアリーディングなど約30の種目を挙げ、それぞれに対して5段階で評価してもらった。

実際に、採用する企業側は、どの程度学生の部活動経験を意識しているのだろうか。インタビューに応じた野村証券人事部次長兼採用課長の石黒智之さんは、次のように解説する。

「面接の場で、学生に部活動に所属していたか否かを問うことはありません。『学生時代にどのような経験をしてきたか』と尋ね、それに対する答えから、学生が何を考え、どのような努力をして結果を出したのかを見ています」

一方で、プレジデント誌のインタビューに応じるにあたって自社の社員の部活動経験を調査したところ、人事部にとっても意外な事実が判明したという。

「過去10年、新入社員の一定数が体育会出身者でした。意識して採用したわけではないのですが、結果的には体育会系出身者の占める割合が大きくなっていました」(石黒さん)

ではほかの企業はどうか。サッポロビールの人事部マネージャー・萬谷(まんたに)浩之さんは、自社の社員について次のように語ってくれた。

「酒類を扱うメーカーは体育会出身の担当者が多いというイメージがありますが、私の同期入社では、40人のうち体育会出身者は5人。会社全体を見ても1~2割程度の印象です」

萬谷さん自身は、体育会系出身者にどのようなイメージを持っているのか。

「スポーツを通じた成功体験を得ていることが、ビジネスの面でも強みになると思います。試合で勝つか負けるかだけでなく、陸上でタイムを縮めたり、球技で自分の技術を磨くなど、何かしらの形で目標を設定し、達成してきた経験がある。自分で設定したゴールに向けて道筋をたて、どう努力するのか工夫した経験がある人は、ビジネスでも結果を出すまで粘り強く頑張れる印象があります」

アンケートの結果を見ても、「体育会系社員が入社後、活躍している印象があるか?」という質問に対しては7割以上の採用責任者が「はい」と答えている。面接においては、体育会出身の学生のどのようなエピソードが印象に残っているのか聞いてみると「礼儀正しく、ハキハキとしている」「勝つことに強いこだわりを持ち、幾多の失敗・挫折経験を乗り越えて結果を出した」などの回答が見られた。総じて、体育会出身の学生に対しては、明るく挨拶ができ、結果を出すために前向きに進んでいく姿勢が評価されている。