7月27日、民進党の蓮舫代表が「代表を引く決断を致しました」として辞任の意向を表明した。これまで野党勢力は「安倍1強」に対抗すべく、政権批判に注力してきた。だが、それは効果を発揮したのだろうか。直近の選挙での投票傾向を分析すると、自民党も民進党も有権者の支持を減らし、「入れるところが見つからない」という無党派層の増加がはっきりと見える。さまよえる無党派層の受け皿となるのは、どこなのか――。

かつての民主党支持票はどこに

「政治を諦めないでください」。これは、みんなの党が2013年(平成25年)の参院選で有権者に向けて訴えかけたスローガンの一つである。みんなの党は自民党でもなく民主党でもない有権者の受け皿となることを標榜していた。自民党から民主党に政権交代したはいいが、その実態というよりも醜態を見せつけられた有権者は、揺り戻しのごとく自民党支持に戻ると思いきや、必ずしもそうはならなかった。

自民党麻生内閣から民主党鳩山内閣に政権交代した2009年衆院選の投票率は69.28%だったが、民主党野田内閣から自民党安倍内閣に政権交代した12年の第46回衆院選の投票率は、59.32%と10ポイント近く下落した。

民主党政権への期待が裏切られたことへの反動と見ることもできるが、そうであれば、その前の衆院選と同様の投票率となり、民主党に向かった票は雪崩を打って自民党へ向かったはずである。しかし、投票率が大幅に下がったばかりか、民主党のみならず自民党も12年の衆院選では得票数を大幅に減らしている。

2009年の衆院選と比べて、民主党は比例区では2021万6146票減、小選挙区では1987万6561.262票減(以下、得票の小数点以下の数字は按分票)、対する自民党も比例区では218万5760票減、小選挙区では165万8672.637票減である。

この選挙で比例区、小選挙区ともに09年の衆院選と比べて得票数を大幅に伸ばしたのは、みんなの党のみである。なお、みんなの党とともに第三極の一翼を担ったとされる日本維新の会は、09年の段階では結党されていないので、比較するデータがない。

「政治を諦めた」有権者の存在

つまり、少々大ざっぱな言い方ではあるが、自民党はダメで民主党に期待したけどやっぱりダメだった有権者の票が、第三極と棄権に向かったわけである。もちろん棄権については、そもそも政治や選挙に関心がない、政治的無関心と表現することもできるかもしれないが、関心はあるが入れるところがなかったという人がその半数以上を占めていたのではないかと思う。

そして、この関心はあるが入れるところがなくて棄権にまわってしまったり、政治への関心を失ってしまって棄権にまわってしまったりした人たちというのが、「政治を諦めた」人たちである。

さて、「1強」と呼ばれた安倍政権も今や支持率は急降下し、危険水域に入ったといわれている。時事通信の世論調査では、7月の安倍内閣の支持率は29.9%で、第2次安倍内閣発足後で最低の値。政党支持率で見てみても、同じく時事通信の世論調査では、7月の自民党の支持率は21.1%と前月に比べて約4ポイント減。減った分、野党の支持が増えたかと思いきや、民進党の7月の支持率は3.8%と前月に比べて0.4ポイント減、共産、日本維新、自由もいずれも微減であり、増えているところはない。増えたのは支持政党なしの、いわゆる無党派層で65.3%と前月から4.5ポイント増えている。

まさに与野党の支持率が減ってその分無党派層が増えているというわけで、こうしたことを踏まえると、国政レベルでは自民党でも民進党でもない有権者、「政治を諦めた」有権者の受け皿となる勢力は、残念ながら現状では存在しないと言い切ってしまっていいように思う。

では今後はどうなるのだろうか? 受け皿がないまま、低投票率と風まかせの投票行動の組み合わせがつづくのだろうか?

「都民ファースト大勝」の内実

2017年東京都議会選挙「都民ファースト」が圧勝(写真=つのだよしお/アフロ)

こうした中でにわかに注目が集まっているのが「都民ファースト」ならぬ「国民ファースト」である。都民ファーストの会が、都議選での地滑り的勝利を受けて、今度は国政に打って出るのではないかという話である。

実際、小池知事も都議選後「国民ファースト」という言葉を口にしているし、小池氏の側近ともいえる若狭勝衆院議員も国政への進出の可能性について報道番組で言及している。自民党の大敗、民進党の惨敗に終わった今回の都議選、確かに自民党で民進党でもない有権者の受け皿として都民ファーストが登場したと考えられなくもない。しかし、得票数と得票率さらには投票率に着目すると、必ずしもそうともいえないことが分かる。