観光客が大挙して押し寄せ、地域でトラブルを起こす「観光公害」が増えている。京都では27年続いていた夜桜イベントが中止に追い込まれた。ただ人を集めるだけでは、対応コストは増えるばかり。観光客にカネを落としてもらうには、どうすればいいのか?

「観光公害」で観光客はありがた迷惑

今年6月、朝日新聞が「超満員のバス、消えゆく情緒……急増する訪日客に京都苦悩」というタイトルで、京都が直面している観光客の急増問題を報じた(2017.6.14付)。

現在、我が国は訪日観光ブームに依然として沸いており、昨年は訪日外国人客数が史上初めて2000万人を突破、今年はそれをはるかに超える2700万人に届くのではないかとする観測もある。一方、急増する訪日外国人観光客によるマイナスの側面も目立ち始めている。その代表が今回、朝日新聞によって報じられた京都の混雑問題である。

現在、我が国に急増する訪日外国人客が大挙して京都に押し寄せており、市民の日常生活の「足」となってきたバスは常に満員、市民の生活圏の中に違法民泊業者も増え、住民からは「もはや限界」という声も上がっているという。

また、京都観光の目玉のひとつとなっている祇園では観光客の急増に伴い、今春から過去27年にわたって行われてきた夜桜のライトアップが中止となった。ライトアップ実行委員会の秋山敏郎代表は、朝日新聞の取材に対して「外国人観光客が増え、花見客が多過ぎる状況で、人集めを続けることに不安を感じた。事故の心配もあり、地元では受け切れないと考えた」とのコメントを寄せている。

▼ゴミ処理、トイレ整備……全部、地元民の血税を投入

いわゆる「観光公害」が京都で起きているのである。

「観光公害」とは聞きなれない言葉であるが、観光客急増による様々な弊害が目立ち始めた現在、我が国において徐々に使われ始めている新しい造語だ。これに関連して、6月15日に発売された拙著「『夜遊び』の経済学 世界が注目する『ナイトタイムエコノミー』」(光文社新書)では、第三章の「夜の観光を振興する」において観光振興を考えるにあたって以下のように記述した。

《観光客は「ただそこに来る」だけでは経済効果は生まず、むしろそれを受け入れる側の地域にとっては、一義的に「コスト要因」に他ならない。観光客が訪問先でゴミを発生させれば、それを処理するのは地域の自治体であり、その原資は地域に住む住民の治める税である。観光客が歩く公道、使用する公衆トイレは全て自治体財源によって維持管理される公共物であり、ましてや観光客を迎え入れるために新たなインフラ整備を行うということになれば、当然そこには地域住民の血税が投入されることとなる。

そのような様々な財源部分の話をさっぴいたとしても、そもそも域外から得体の知れない人間が多数来訪し、道端でワイワイガヤガヤと大騒ぎし、私有地や進入禁止地域にまで入り込み、「旅の恥はかき捨て」とばかりにトラブルを巻き起こすなどというのは、地域の住民にとって必ずしも歓迎されるものではない。はっきり言ってしまえば、観光客というのはそこに根ざして生活する人間にとっては、根源的に厄介者であり、迷惑以外の何ものでもないのである》(以上、引用)