英語を学ぶ人は、一度は「英字新聞」を読破したいと考えるのではないだろうか。だが、学習者向け英字紙の編集長は「全部読むのだけはやめてください」と話す。その理由とは――。英会話教室イーオン・三宅義和社長の対談連載。今回の相手はジャパンタイムズの高橋敏之氏。前後編の前編をお届けします。

「全部読むのをやめて」とアドバイス

高橋敏之・The Japan Times ST編集長

【三宅義和・イーオン社長】今回は『The Japan Times ST』第11代編集長の高橋敏之さんにお越しいただきました。日本で最も歴史のある英字新聞「The Japan Times 」が全て英語であるのに対して、『The Japan Times ST』は日英バイリンガル週刊紙。主に英語学習者向けにつくられているもので、以前は「Student Times」とか「週刊ST」と呼ばれていました。今回は、英字新聞の使い方についてうかがっていきたいと思います。

「The Japan Times」は今年120周年だそうですね。創刊が1897年、明治時代です。一方、「The Japan Times ST」の前身である「Student Times」は1951年の創刊です。実は、私の生まれた年でもあります。

【高橋敏之・The Japan Times ST編集長】「The Japan Times」は日本の現状と世界の動向を、外国人を中心に国内外に発信している媒体です。ただし、英語学習者が語学を学ぶために読む、という役割もあります。これに対して「The Japan TimesST」は、英語学習者向けに特化した編集を心がけています。

【三宅】主な読者層はどのような方々ですか?

【高橋】発刊当時は学生向けでした。ただ卒業後も継続して読んでくれている人がいます。さすがに「Student(学生)」と書いてあると、ちょっと買いづらいという意見があり「ST」と略しました。編集部としては、だいたい英検準2級から1級に合格するまでの人たちをフォローできるような紙面構成を心がけています。つまり、ある程度英語ができる人が対象ですが、新しく学ぶ単語、言い回しなども多くあるはずです。それらを最新のニュースで学べるというところが特長になります。

【三宅】ビジネスマンや主婦、年配の方もいるわけですね。

【高橋】はい、幅広いですね。学生向けというと易しいというイメージを持たれます。「『The Japan Times』なら読むけど……」という人たちも多いと思いますが、やや敷居が高い。「あなた、そこに書いてある英語を理解するだけでなく使えるんですか」となると、まだ自信がないという方は多いのではないでしょうか。そこを「ST」がフォローしている感じです。

【三宅】実はそれが英語学習上の、すごく重要なポイントだと思うのです。どうしても日本人は、英文が読めると、そこでもうわかった、理解できたと。しかし、実際に外国人と会話や仕事で使えるというのは、また別問題です。わかるからと言って使えるとは限りません。でも、使えるのはこのあたりまでなのに、皆さん、難しいものに手を出したがる傾向があります。やさしいものをバカにせずに、それを使えるようにするというのが英語上達の近道です。

その意味で「ST」には、カラフルな写真も多く、記事の要約が日本語のリードになっていますし、難解な単語、熟語の解説もありますから、いちいち辞書で調べなくていい。読者にとって、本当に親切ですよね。

【高橋】辞書自体には有益な情報が書いてあるんですが、どうしても調べるのがおっくうになってしまい読むことをやめてしまいがちです。映画のコーナーは対訳にしてあります。訳と照らし合わせることによって、いろんな発見があるんですよ。

【三宅】1面のトップニュースは誰が決められているのですか。

【高橋】私が中心となって決めています。その週に起きた、一番大きなニュースであることと、それから読者の皆さんが興味を持ちそうなテーマであることと、ある程度、写真映えするということが大事になってきます。