5月29日、サッカーのスペイン1部FCバルセロナは、胸部に大きく「Rakuten」と書かれた新ユニホームを発表した。これはネット通販大手の楽天とのスポンサー契約を受けたもので、契約金額は4年で2億4560万ユーロ(約288億円)という。
現在のスポーツにはこれだけ「稼ぐ力」がある。そして海外のチームだけでなく、日本のスポーツ産業にも、こうした取り組みが求められている。書籍『プロスポーツビジネス 私たちの成功事例』(東邦出版)を構成したライターの野口学氏が解説する――。
FCバルセロナ シーズン2017/18年第一ユニフォーム

「体育」を「スポーツ」に変える

昨年、日本政府は「日本再興戦略2016」を閣議決定し、その具体策のひとつとして「スポーツの成長産業化」を掲げた。これは日本のスポーツ産業にとってエポックメイキングな出来事だった。これまで“体育”という教育的な観点でしか捉えられていなかったスポーツが、有望な成長市場として見直されたことを意味しているからだ。

残念ながら、日本のスポーツ産業は欧米に比べて後れている。スポーツ庁によると、日本のスポーツ産業の国内市場規模は約5.5兆円、GDP比は1%程度。それに対してアメリカでは50兆円を超えており、GDP比は約3%にも及ぶ。また欧米に限らず、経済発展の著しいアジア地域においてもスポーツ産業市場は拡大を見せており、中国に至っては2025年までに約76兆円規模へと押し上げることを目標としている。今やスポーツの持つ経済的な力を自国の成長につなげる動きは世界中で活発化しており、スポーツ産業は飛躍的に巨大で魅力的なマーケットへと成長している。

スポーツ庁の目標は15兆円

こうした潮流の中で、ついに日本政府もスポーツの持つ力に目を付けたというわけだ。スポーツ産業の振興には経済産業省とスポーツ庁が協力して取り組み、国内の市場規模を2020年までに10兆円、2025年までに15兆円規模へと拡大させ、ゆくゆくはわが国の基幹産業へと成長させることを目標としている。2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック・パラリンピック、2021年のワールドマスターズゲームズ関西といった国際スポーツイベントが連続して日本で開催される今こそ、その絶好の機会だといえるだろう。

目標達成のうえで最も重要なのは、スポーツ産業の自立的な好循環を実現させることにある。そのキーワードが、「スポーツで稼ぐ」(スポーツの収益化)だ。