働けば収入を得られる。だが、リタイアしたり健康を害したりすれば、たちまち無収入だ。高齢者の場合、頼みの綱は年金だが、実際は預貯金を崩しながらの生活だ。つまり、生きれば生きるほど資産は目減りする。その恐怖心とはどんなものか。それに対処するには現役時代にどんな準備をしておくべきなのか。

40歳 乳がんになって思い知った「無収入」「資産目減り」の恐怖

それは、筆者が乳がん告知を受け、治療をしていた41歳の頃のことだった。

1カ月だけだが、銀行口座に1円も入ってこないときがあった。ただでさえ、がん闘病で心身が疲労し、医療費の支払いが少なくないところへきて、「入金0円」は正直、恐怖だった。たぶん、このときの思いは一生忘れられないと思う(参照:黒田尚子著『がんとお金の本 がんになった私が伝えたい58のアドバイス』(Bkc刊))

大学を卒業して大手シンクタンクに就職。同社を退社後、28歳でFPとして独立して以来、「無収入の月」は初めての経験だった。言うまでもないが、フリーランスにとって、毎月少なくても一定の固定収入を得るということは、非常に重要なことである。

経済的な側面はもちろんのこと、仮に仕事(執筆や講演やマネー相談など)があっても、収入が不安定ということは、それだけで不安やストレスがたまるものだ。筆者の場合、独立したのが、独身でひとり暮らしをしていた頃だったため、頼れるのは自分ひとり。仕事の発注先によって仕事の納期などと支払いの時期がずれることもしばしばあるので、入金がいつかもわからないケースも多い。

それを補完するために、保有する株式や投資信託の配当の時期を分散し、毎月一定額のインカムゲインを得られるなど、毎月何らかの収入が入ってくるよう工夫もしていた。ところがタイミングの悪いことに、乳がんの検査や手術のために入院し、物理的に仕事ができない期間が、その配当や分配金などがゼロの“空白期間”に重なったことで、冒頭の事態に陥ったというわけだ。

▼入金0円、「お前にはもう用はない」と言われた心境

当時はすでに結婚しており、またある程度の資産を保有していた。1カ月の入金ゼロで路頭に迷うわけでもなかった。それにも関わらず、とにかく非常にショックだった。その恐怖の度合いは、言葉では表現しにくい。

メイン銀行の口座残高はいつでもネットで確認できたので、入院先のベッドの上でスクロールしながら、「え? ウソ? 今月収入ゼロ?」「来月もなかったらどうしよう……」。

社会や世間から隔絶され、「お前はもう必要じゃない」と宣告されたかのようで、メンタル面がひどくしんどい。20代でまだ若かったら、案外、ダメージは小さかったかもしれないが、いい大人の40歳である。無収入は恐ろしい。