──同じ部署の上司や同僚はみな酒好き。仕事後の飲み会が多くて睡眠不足が悩みです。

職場は何よりも仕事をするところです。「今日も一日元気に頑張ろう」とベストコンディションで毎日出勤する。これが社会人の最低限の心構えです。

──そうなんですけど、なんとか角を立てずに断る方法はないかと……。

「僕は会社に貢献したいんです。飲みに行くとフラフラになっていい仕事ができませんから、今日は勘弁してください」。そうキッパリと断ってみたらいかがでしょうか?

──「いいから、行くぞ!」と、連れて行かれそうです。

管理者研修の講師で行くと、時々「やはり飲みニケーションが大事ですよね」などと言う人がいます。彼らには「これからの時代の管理者のあり方について自覚が足りませんね」と指摘させていただいています。例えばもし部下が宗教上の理由でお酒が飲めない場合、飲みニケーションを強要するわけにはいきませんよね。

──ダイバーシティ(多様性)の時代ですもんね。

そもそも、現代の日本人ほど「呑み助」に寛容な先進国はありません。酔っ払って道端で吐いたりするのは日本人だけではないでしょうか。グローバル企業であれば、自己管理能力がないとみなされ、クビになります。

──日本では、「飲むのも仕事」のような風潮がありますよね。

でも、グローバルには原則として酒が飲めることがプラスに働くことはありません。

 今から20年程前、海外の取引先の幹部が来日したときのことです。上司は喜び「ずっと大事にしていた60年代のワインを開けよう」と、会社の食堂で2時間ぐらい前に開栓し、お客様を待っていました。その後、先方は1人で食堂にやって来ました。

「このワインはあなたのためにさきほど開けました。一杯飲んでください」と上司が伝えると、先方は「気持ちは感謝しますが、私は2年前から酒を断っていますので、水で結構です」と言いました。日本人であれば「では、一杯だけいただきます」などと言うでしょうが、海外では平気で断ります。

──角が立つかも、とは考えないのですね。

文化の違いでしょうか。海外ではたいていそうですよ。日本が特殊なのだと思います。海外では、6時に仕事を終えたらまっすぐ家へ帰る。連日同僚と飲みに行くのは日本くらい。だから、外国人を日本のクラブやバーへ連れて行くとびっくりします。なぜこんな楽しい所があるんだ、と。

──え? 外国人に酒文化を教えてもプラスに働かないのでは……。

Answer:同僚と連日飲みに行くのは世界中で日本人くらい。キッパリと断りましょう

出口治明(でぐち・はるあき)
ライフネット生命保険会長 

1948年、三重県生まれ。京都大学卒。日本生命ロンドン現法社長などを経て2013年より現職。経済界屈指の読書家。
(構成=八村晃代 撮影=市来朋久)
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