ここ数年、関西を訪れる外国人観光客が増えているという。関西でボランティアガイド活動を行う「VISITKANSAI(ビジット関西)」の代表が語るボランティアガイドの心得とは。

外国人のニーズをいち早く理解できるか

濱田憲洋・VISITKANSAI代表

【三宅義和・イーオン社長】ボランティアガイドをされていて、濱田さんご自身、あるいはメンバーの体験でもけっこうですが、とりわけ喜ばれた訪問先あるいは出来事のエピソードを教えていただけませんか。

【濱田憲洋・VISITKANSAI代表】私個人のケースですけれども、相手はアメリカからきた人で、とにかく酒好きでした。関西だと日本酒の蔵元もありますし、ウイスキーの蒸留所もあります。「どこがご希望ですか」と尋ねたら「全部回りたい」と(笑)。

そこでまず、サントリーの山崎蒸留所(大阪府島本町)に行きました。ひと通り工場見学が終わると試飲もできます。私は、あまりアルコールに強くないのですが、ひとしきりお付き合いしました。とはいえシングルモルトを水割り、オンザロック、ストレートで飲んだのではたまりません。

途中でベロンベロンになりましてね。ガイドしているんだか、逆に介抱されているのか、よくわからない感じになりました。京都では伏見にお連れし、酒蔵を見学したのち、日本酒を試飲しましたが、後半の記憶が飛んでいました。幸い「君のお陰で日本のお酒とたくさん出会うことができた。ありがとう」と感謝されたことはかろうじて覚えているのが救いでした(笑)。

【三宅】いや、その方は大満足だったに違いありません。

【濱田】楽しんでいただけたと思います。ちなみに彼は、日本が本当に好きで、それ以降も何度も日本に来ています。その都度、連絡をくれ、「またガイドを頼めるかな。一緒に飲みに行こう」とか、「友だちがそちらに行くからアテンドしてほしい」とリクエストされています。

【三宅】逆に失敗例は。

【濱田】これは私ではないのですが、利用者の期待に応えられなかったのではないかという例です。たぶん、まだコミュニケーションに慣れていなかったメンバーだと思いますが、利用者の要望に耳を傾けずに、自分の言いたいことだけを話し続けてしまったそうです。ガイドが一方通行になってしまったケースです。

【三宅】それは自分の英会話に自信がなく、何か聞かれても答えられないという不安があったのかもしれませんね。VISITKANSAIに登録してガイドをこなすためには、どの程度の英語力が求められますか。目安として英検2級とか準1級とか、TOEICであれば何点以上が望ましいといった基準のようなものはありますか。

【濱田】そういった英語試験のスコアは参考にしかしていません。もちろん、最低限の会話能力は必要だと思います。イメージとして近いのは中学校で習うレベルの英語です。中学校教科書レベルの読み・書き・話し・聞くということができればガイドは可能です。あえて言えば、そこが目安になるかなと思います。

【三宅】すごくわかりやすい。中学英語とは言いますが、中学校で習う単語と基本構文が本当に使えるのであれば、日常会話には困らないはずです。これからガイドのための勉強をしようという人たちにとっては勇気を与えてもらえます。

【濱田】語弊があってもいけませんが、語彙や文法の知識はあるに越したことはありません。けれども、ガイドに求められるのは、相手の声に耳を傾けることだと考えます。先方のニーズをいち早く理解し、それに対してこちらができることを伝えていくことが大事です。