「一流のホテルマンは客の足元(靴)を見て客のレベルを判断する」という話は有名だが、ビジネスの世界でも同じことがいえる。つい手を抜きがちな足元に気を配ることが、成功への近道だ。

靴には持ち主の人柄が表れる

スーツやネクタイには多少気をつかっても、靴には無頓着なビジネスマンが多い。街を歩くと、安物の靴をろくに手入れもしないまま履き続けている男性をよく見かける。しかし、多くの人が思っている以上に、「靴」は重要な存在である。

「あるレベル以上のビジネスの世界になると、TPOに応じた身だしなみができるかどうかが、その人の評価につながります。そこで失敗すると、いくら本人の実績やスキルが優れていても、次のビジネスのドアが開かないのです。とりわけ靴は、履いている人物の評価に直結します」

こう語るのは、経営コンサルタントとして3500社超の経営者を見てきた石原明氏。ビジネスマンは靴のよし悪しで値踏みされるというのだ。

<三流の安物の悪い靴>
(1)革質が悪いため、磨いても光沢が出ない。
(2)シューキーパーを入れていないため、見苦しい「折りジワ」。
(3)一体型のゴム製ソール(靴底)をアッパー(甲の部分)に接着剤でくっつけただけ。ヒールもソールも交換できない。


<一流の履き込まれた良い靴>
(1)革質が良いため、磨くと美しい光沢が出る。
(2)シューキーパーを入れて保管しているため、「折りジワ」が美しい。
(3)ソール(靴底)とアッパー(甲の部分)を糸で縫い付けている。ソール交換でき、長く履き続けられる。

さらに石原氏は「靴を見ればその人が出世するかどうかもわかる」と言い、次のようなエピソードを紹介する。

「長く活躍する芸人さんは、テレビ局でAD(アシスタントディレクター)の靴を見るそうです。汚れた靴が多いなか、綺麗な靴の人がいたら仲良くしておく。その人はほぼ確実にディレクターになり、一部は経営幹部にもなっていくそうです」

ものを大切に扱う人は、人への心配りもできるので周囲から自然に引き上げられ、出世していくというのだ。

東京・南青山で靴磨き専門店、Brift H(ブリフトアッシュ)を経営している長谷川裕也氏も、「社会的な地位のある人で、靴に気を配っている人はとても多いですね」と断言する。同店は、多くの企業経営者や資産家から高級靴の磨きや修理を依頼されている。長谷川氏によると、一流と呼ばれる人たちの靴へのこだわりは並外れているという。

また、よく手入れされた靴を履く人は所作にも品が漂うと長谷川氏は言う。

「常に足元に気を配っていると、自然に行儀がよくなります。反対に、電車でだらしなく足を投げ出している人の靴は、たいてい汚れていますね」

石原氏によると、一流の人なら、靴に持ち主の人柄が表れることを知っている。だから他人の靴をそれとなくチェックしているというのだ。