本当にネズミは500匹だけなのか

2017年3月10日、「築地市場(場内)において、15年5月の調査による推定生息数で、500匹のネズミ」がいると日経新聞朝刊が報じた。

実は、この情報は、私が人を介して2月に東京都へ情報公開請求を行ったものだ。東京都から「資料ができた」と3月14日に連絡があったので、4、5日ほど前に事前にプレスへ流したのだろう。この500匹という数字が、多いのか少ないのかわからないだろうが、資料を精読していると、築地市場(場内)にいるネズミは、少なくとも2000匹以上いると試算できることがわかった。この資料について、今回は詳細に解説していきたい。

この資料の正式名称は「築地市場閉場に伴う場内ねずみ対策にかかる調査委託」である。小池百合子東京都知事がストップをかけるまでは、豊洲移転は既定路線であった。築地市場を閉場した際に、ネズミが大量に他地域へ逃げ出さないよう駆除するため、市場内のどこを重点的に駆除対象とするかを調査するために実施された。これまでは、駆除できた数からネズミの総数を推定するしかなかったが、この調査では赤外線カメラを使って肉眼では確認できないようなネズミの巣の中も覗きながらネズミの数を推定したものだ。そして、その推計の総数がネズミ500匹となったという。

しかし、資料を精査していくと恐ろしい事実に突き当たる。この調査は、もっともネズミが大量にいるであろう「築地市場の水産物部(水産物部仲卸業者売場)」が対象になっていないのだ。水産物部は面積も大きく、大量の魚を取引する築地市場(場内)の中心部である。ネズミの目撃談も多く、私が歩いたときもネズミが横切ったことがあった。

では、なぜ、東京都は調査をしなかったか。それはこの調査が、「どこを重点的に駆除するかを決めるため」の調査であったからだ。水産物部は(調査をしなくても)駆除の重点地域であり調査する必要がないと判断したようだ。

実は、築地市場(場外)でも、肝心のネズミの捕獲調査ができていないことが、管轄する中央区保健所へのヒアリングから判明している。その理由として保健所の担当者は、道にせりだした店舗が多いことや、営業時間が長く、ネズミ捕獲の主体を店舗の組合に任せていることをあげていた。公道を使っての営業は許されるものではないはずだが、警察の動きも鈍いという。

まったく実態がわからないのでは、不安ばかりが先行してしまうので、私なりの試算で、築地市場に棲むネズミの総数を考えていきたい。私は、水産物部に隣接する「第6卸売業者売場」という小さな建物に注目した。ネズミが捕獲される地域が、この水産物部と第6卸売業者売場に集中しているからだ。私が開示請求した資料によれば、東京都は15年の調査のほかにも4回の捕獲数調査を行っている。14年8月実施の捕獲数調査では、水産物部229匹に対し、第6卸売業者売場は1匹だった。14年5月では109匹に対し、1匹。13年8月では、271匹に対し、8匹。13年5月では、123匹に対し、3匹だった。これらの調査を平均すると、第6卸売業者売場1匹に対し、水産物部は100(103.219)匹のネズミが捕獲されていることになる。