不要なものはどんどん捨てる

持ち物を強く意識するようになったのは2000年にアートディレクターとして独立したときです。まだケータイが普及し始めでしたが、その頃から手帳ではなくデジタルでスケジュールを管理しています。

自分の事務所を立ち上げるにあたって、物や紙の資料は極力減らしました。写真集には貴重なものもあって手放すのは惜しかったですが、後輩たちに譲りました。「見たくなったら貸してほしい」と言っていたんですけど、結局一度もそんな機会はなかったですね。

僕は行動するときは、基本手ぶらです。持ち歩いているものは財布とカギ、そしてiPhone。必要があればiPadを持ち出すくらい。名刺入れも持っていません。たとえば3人と会う予定ならば名刺を3枚だけその場に持っていく。貰った名刺はポケットに入れておいて、オフィスに帰ったらすぐファイリングするほうが、きちんと整理できます。

デスクの上もパソコンがあるだけです。個人で持っている文房具はペンくらいで、赤のマジックやカッター、テープなどは事務所全体で一つを共有すれば事足ります。紙の資料は読んだら破棄するか、デジタルで保管します。

出張かばんにはこだわりがあって、僕がプロデュースしたスーツセレクトの製品を愛用しています。1泊2日の出張を想定していて、整理しやすいようポケットもたくさんついている。軽いわりに容量も大きい。もっとも僕が持っていくのはシャツの替えやiPadなど最小限のものですけどね。

今はつねに30件ほどの企画を抱えています。スケジュールの管理はマネジャーが一括して行い、スタッフと共有し、iPhoneで確認しています。30件というと驚かれますが、僕にとっては30人の友達がいる感覚。友達30人が判別つかないなんてことはないでしょう? それぞれと約束したり、会ったりする感覚で仕事をしています。

自分がマネジメントする側にたつと、目の前の仕事の、何からとりかかるかつねに選択を迫られます。僕自身はなんであれ「決めてしまう」ことを重視していますね。たとえばあるアイデアについて「この会議で一度決めよう」といって、今のところの結論を出すんです。早く決めた分、時間はまだあるのだから、結論を出したアイデアについて前向きにより良いものを考えていく。さらに良いアイデアが出たらアップデートすればいいんですから。

そうすると、クライアントも、一緒に仕事している仲間も、とりあえずの形が決まっているから安心できる。最後まで結論を出さずにいるよりもずっとクオリティは上がります。悩むよりも、まず決断する。仕事はそこから拓けていくものだと思います。

クリエイティブディレクター 佐藤可士和

1965年生まれ。博報堂を経てSAMURAI設立。主な仕事に国立新美術館のシンボルマークデザイン、ユニクロ、楽天グループ、セブン-イレブン・ジャパンのクリエイティブディレクションなど。
 
(構成=伊藤達也 撮影=的野弘路)
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