ノートを使わず書類の隅にメモ

意外に思うかもしれませんが、インターネット業界には、紙のメモ帳を愛用する人がたくさんいます。私も以前は、仕事に関することはすべて専用のノートに時系列で記録していました。

ネットイヤーグループ社長 石黒不二代氏

ただ、近ごろはそうしたノートを使うことはほとんどなくなりました。書き留めておく必要を感じたら、ノートの代わりに手近な書類の隅などにさっとメモして、そのうち忘れたら困る情報だけを、PCを開けて「TO DOリスト」に転記するのです。

たとえば、「アンディに連絡してコミュニケーションをとり、彼の合意を得る」というのが目的なら、「アンディに連絡」とプロセスだけをTO DOリストに記入し、その時点でメモした紙は捨ててしまいます。記録として残しておいたほうがいいものはファイルしておきますが、実際には紙のファイルが役立つことはまずありません。

TO DOリストの情報にプライオリティはつけますが、仕事とプライベートの区別はしていません。仕事のほうが大事だからと私用のやるべきことを疎かにしていたら、日常生活がうまくいかなくなってストレスがたまり、結局、仕事にも影響が出てしまうと考えるからです。

面談や出張予定などの管理には、手帳代わりにクラウドベースのグループウェア「rakumoカレンダー」を使います。基本的に予定を記入するものですが、私はここに「結果」もどんどん書き加えます。面談の内容、医師の所見など、こちらも公私を問わず入力します。簡単に検索できるので、あとで見返すときも便利です。

実をいうと、最近は「分類」という作業自体を行わないようになりました。それには理由があります。

インターネットの商用化が始まってから10年で、ネット上を行き交う情報量は500倍に増えたといわれます。かつてシリコンバレーでは、もらったメールに即答するのがエグゼクティブを含めた「住人」たちの習慣でした。しかしメールだらけになったいま、それができる人はどれだけいるでしょう。全メールに即答するのは事実上不可能なのです。

そうなると、受け取った情報を分類し、目次を付けて保存するという「きっちりした」やり方では、作業量ばかりが増えて効率的とはいえません。メールなどの情報は受け取った瞬間にその場でチェックし、整理や分類をしないでPCやクラウド上にためていく。あとで必要になった場合は、検索エンジンを活用して改めて呼び出すというやり方に変えていくことが必要なのだと思います。