安倍晋三首相の妻昭恵氏の言動に注目が集まっている。議論は「私人」なのか「公人」なのかという点に集中しているが、すでに昭恵夫人の影響力は、その別を越えている。昭恵夫人の考え方、つまり「昭恵イズム」は、安倍首相などを通じて、国を動かしているからだ。
昭恵夫人は「国際波動友の会」の機関誌で、「水・意識・波動の話は正しいと直感しています」と述べている。波動は典型的なオカルトで、東京都も警告を発している。さらに「ホーリーバジル」という薬草の普及を手がける協会の理事でもある。この協会は「放射線被曝からの中和作用がある」などとしている。「疑似科学」と首相夫人の近すぎる関係を問う――。(編集部)

安倍首相の父は「波動測定」を受けている

安倍晋三首相は、憲法改正ということに熱心であり、一般的には右派の政治家とみなされている。

昭恵夫人は、そうした夫の政治姿勢に対して真っ向から批判を展開しているわけではないが、東日本大震災の後に、津波を防ぐための巨大な防潮堤の建設に反対したり、有機農法に取り組んだり、原発よりも再生エネルギーへの転換を主張したりと、右派ではなくむしろ左派的な立場をとっているようにも見える。

このように対照的な姿勢を示していることから、この夫婦の仲が悪いとか、仮面夫婦であるといったとらえ方があるわけだが、前回述べたように、昭恵夫人は、夫が自らの政治姿勢を貫けるよう、「内助の功」を果たそうとしている。

そうなると、昭恵夫人の思想、考え方とは本当は何なのかが問題になってくる。その点について、『朝日新聞』は「リベラル? 国粋的? 安倍昭恵さんの思想とは」(4月6日付朝刊)という記事で追求を試みていた。

その記事の中で、一つ注目されるのが、昭恵夫人が「波動」ということに強い関心を抱いているとされている箇所である。

『文藝春秋』3月号でも、ノンフィクション作家の石井妙子氏が「安倍昭恵『家庭内野党』の真実」という記事で、昭恵夫人は、「水の波動」理論の提唱者である故江本勝氏に強く共感していると書いている。

実際、昭恵夫人は、江本氏が主宰する「国際波動友の会」の機関誌において、「江本先生のおっしゃる水・意識・波動の話は正しいと直感しています」と述べている。たんに共感しているだけではなく、江本氏とは直接に付き合いがあったようだ。昭恵夫人からは義父にあたる故安倍晋太郎氏が、江本氏から波動を調べてもらい、「転写水」を作ってもらったこともあったという。