「原則屋内禁煙」厚労省案をめぐる与野党の動き

大阪・豊中市の某小学校への国有地売却問題一色になったかのような春の国会。しかし、他にもある法案についての綱引きが行われている。厚生労働省が原案をまとめた「健康増進法改正案」をめぐる与野党の動きが、それだ。

3月1日に厚労省が公表した原案は、受動喫煙防止対策を盛り込んだもので、基本的に屋内禁煙を定めたもの。飲食店を原則屋内禁煙(喫煙専用室は設置可)とし、酒類を提供するバーやスナック(延べ床面積30平方メートル以下)などは、例外的に換気設備の設置などを条件に喫煙を認めるというものだ。しかし、与野党ともにまとまっていないなかの厚労省案公表は、大きなハレーションを起こしている。

自民党厚労部会(部会長・渡嘉敷奈緒美衆院議員)では、健康被害を懸念する声に一定の理解を示すものの、小規模な飲食店にも摘要されることに異論が続出し、法案が通るメドすら立っていない状態。また、党たばこ議連(会長・野田毅前党税制調査会長)は7日に臨時総会を開催し、たばこ葉農家の保護や小売店、飲食店、旅館・ホテルの経営悪化を阻止するために気炎を上げた。

自民党ばかりではない。民進党では2月28日に「分煙推進議員連盟」(会長・松原仁衆院議員)が設立された。過度な規制は避け、完全な分煙ルールを作り、先端的な分煙国家をめざそうという旗を掲げて立ち上げたものだ。こちらも厚労省案に危機感を持ち、急きょ設立されたといっていい。設立総会には、一般社団法人全国生活衛生同業組合中央会の田中清三理事長や「浅草おかみさん会」の冨永照子理事長が駆けつけ、ヒアリングで小規模店舗の現状を訴えた。

一方、厚労省案賛成派も黙ってはいない。超党派の「東京オリンピック・パラリンピックに向けて受動喫煙防止法を実現する議員連盟」(会長・尾辻秀久元厚労相)は14日、菅義偉官房長官に要望書を手渡し、速やかな法案提出を求めた。同連盟には、武見敬三参院議員(自民党)や小池晃参院議員(共産党)といった"医師議員"をはじめ、県知事時代に受動喫煙防止条例を制定したことで知られる松沢成文参院議員らが名を連ねている。

また、自民党受動喫煙防止議連(会長・山東昭子元参院副議長)は、厚労省案に賛意を示すものの、当面は党内の情勢を静観する構えのようだ。