「二人のカルロス」因縁の対決が始まった

再び熱を帯びてきた世界の自動車業界再編劇の表舞台に、「二人のカルロス」が躍り出てきた。一人は経営危機に陥った日産自動車に親会社となった仏ルノーから出向き、再生に導いたカルロス・ゴーン氏であり、もう片方は仏PSA(旧プジョーシトロエングループ)を率いるカルロス・タバレス最高経営責任者(CEO)だ。

カルロス・ゴーン氏

世界の自動車市場は現在、独フォルクスワーゲン(VW)、トヨタ自動車、米ゼネラル・モーターズ(GM)の「3強」が年間販売台数1000万台規模でしのぎを削る。これに割って入ろうとするのがゴーン氏の率いる「ルノー・日産連合」だ。日産は燃料不正問題で揺れた三菱自動車を昨年、電光石火で傘下に収め、3社合計の年間販売台数で3強に肉薄し、世界獲りを視野に入れる。

それもつかの間、PSAは3月6日、GMの欧州子会社である独オペルの買収でGMと合意した。買収にはオペルの英ブランド「ボクソール」も含まれ、買収が実現できれば、PSAはルノーを抜き、VWに次ぐ欧州第2位の自動車メーカーに浮上する。一方、GMは欧州での足場を失い、3強の座から脱落してしまう。日産・ルノー連合、PSAの立ち回りは世界の自動車業界の勢力図を一変させかねない、まさに台風の目となっている。

「二人のカルロス」にとって、単に欧州でのルノー対PSAというライバルの戦いにとどまらない。なぜなら、ゴーン、タバレス両氏はいまでこそ袂を分かつたとはいえ、かつては師弟関係にあり、因縁の対決にほかならないからだ。ゴーン氏は現在、ルノーの会長兼CEO、日産で社長兼会長兼CEOを務める。タバレス氏は日産の再生に当たってゴーン氏の右腕として再建に尽力し、ルノーの最高執行責任者(COO)に上り詰めた。