農産物販売会社である野菜くらぶは、「よい土をつくるには、よい人をつくることから」という想いから、「人づくり」を経営理念のひとつに掲げている。人材不足が深刻な農業で、その発展を担う人づくりには何が必要なのか。澤浦彰治社長に話を聞いた。

海外の農業を支える外国人労働者

――農業業界では人材の確保が大きな課題です。
澤浦彰治(さわうら・しょうじ)●株式会社野菜くらぶ代表取締役社長。1964年、群馬県昭和村生まれ。1983年群馬県立利根農林高等学校を卒業後、群馬県畜産試験場での研修を経て、実家にて就農。こんにゃく価格の暴落をきっかけにこんにゃくの製品加工に着手。92年、3人の仲間とともに有機農業グループ「昭和野菜くらぶ」を立ち上げ、有機栽培を本格的に開始する。94年、家業を農業生産法人化(現グリンリーフ株式会社)させる。96年、有限会社野菜くらぶを設立し、2002年に野菜くらぶを株式会社化した。著書として『農業で成功する人 うまくいかない人』『小さく始めて農業で利益を出し続ける7つのルール』がある。
野菜くらぶ>> http://www.yasaiclub.co.jp/

【澤浦】当社でもそれは課題です。特に田舎で営む農業では、労働力の確保が難しいんです。私たちが拠点を置く利根沼田(群馬県)でも、10年間で17%もの労働力が減っています。農業での人材不足を補うには、外国人の労働力の活用を真剣に考えていく必要があると思いますね。地方がどのように外国人労働者を受け入れ、日本の文化に溶け込ませていくのか、また犯罪が起きないような仕組みを地域でどうつくっていくのか。これらはとても重要なテーマです。

――労働者不足を補うためには、日本も外国人労働者を受け入れていくべきだと?

【澤浦】海外を見ると、アメリカやドイツ、フランス、ニュージーランド、オーストラリア、カナダ……、先進国と言われる国では外国人労働者が働いていて、農業生産の基盤の部分を賄っています。アメリカやニュージーランドで実際に話を聞いてみると、外国人動労者がもっとも所得を得られるのは農業なんです。たとえばアメリカでは、外国人労働者は農業以外では1日4時間しか働けません。だからダブルワークやトリプルワークが当たり前。でも農場でなら1カ所で12時間働ける。しかも歩合給なので、最低賃金よりも多く稼ぐことができます。だからみんな農場で働くんです。

では、日本はどうかというと、実習生として外国人を受け入れてはいます。当社にもタイから研修生が来ています。ただし、あくまで実習生であり、労働が目的ではありません。労働市場としての日本の国際競争力はないに等しい。先進国のなかで、外国人労働者が農業で働けないのは日本だけです。