なぜ企業は「葉山ゆい」に騙されたのか?

今や、詐欺は高齢者を中心にした個人だけでなく、企業をも狙い始めた。これまで個人に対して行っていた手法を、企業向けにベクトルを変えて、応用してきているのだ。

今年に入って発覚した、「葉山ゆい詐欺」をご存知だろうか。

実在する会社(商社や食品会社、ゲーム会社など)を騙り、1月○日に某ホテルの会場で開催する予定の新年交流パーティーへ招待する案内状(封書)を取引先の会社に送りつける。

文面によれば、新年会の実行委員長は、女性社員である「葉山ゆい」。大役を任された「葉山ゆい」が、パーティーでビンゴ大会を開きたいという。そこで「ビンゴ景品への協賛金をお願いします」というのだ。その金額は任意だが、「可能であれば、3万円」との記載もある。取引先の会社ゆえに、むげに断れずに、お金を払ってしまった被害が続出した(昨年12月だけで大阪府内などの4社が計18万円の被害を受けた。数十社が警察に相談し、被害を免れた)。

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この詐欺には、現代詐欺における特徴がいくつか、みられる。

1つ目は、支払い方法が、電子マネーであるギフト券(発覚した事件では、ネット通販・アマゾンの電子マネーであるギフト券だった)での購入になっている点だ。

購入者(騙された企業)が、相手(葉山ゆい側)の指定するフリーメールアドレス宛にギフト券(利用権)のコード番号を送れば、葉山側はその分の金額を手にできる仕組みだ。直接現金を送るわけではない分、警戒感が薄くなり、番号を教えやすくなってしまう。