「最近、ドトールコーヒーがスターバックスよりも顧客満足度が高い。なぜだと思いますか?」。こうした質問をメディアから受けるようになった。改めて調べてみると、たとえば2016年6月にサービス産業生産性協議会が発表した「2016年度JCSI(日本版顧客満足度指数)」におけるカフェ部門の顧客満足度は、ドトールが2年連続1位となっている。ちなみに2位は同スコアでタリーズとベローチェ、スターバックスは4位だった。

筆者は、8年前の著書『日本カフェ興亡記』の1章で「手軽さのドトール、楽しさのスタバ」と紹介して以来、国内店舗数1位と2位の両社を分析してきた。そこで今回は消費者心理の視点から、顧客満足でドトールがスタバを上回る理由を以下に分析してみたい。

▼満足度その1「手軽さ」

カフェの主力商品であるブレンドコーヒーは、ドトールのブレンド(S)が1杯220円(価格は税込。以下同じ)、スタバのドリップコーヒー(S)は302円と、分量は異なるがドトールのほうが安い。もともとドトールは、創業者・鳥羽博道氏が「お客さんが価格を気にすることなく、手軽にコーヒーを飲んでもらいたい」という志で1980年に開業した業態だ(当時は1杯150円だった)。ブレンドコーヒーは開業時からの看板商品で、現在は220円のジャーマンドッグを一緒に注文しても440円と、ワンコイン(500円玉)でお釣りがくる。

カフェを選ぶ行為は「消費者心理の象徴」だと思う。その理由は手軽な価格で――ほとんどの店がポケットに小銭があれば――利用でき、今日の自分に使い勝手のよい店に(無意識で)行くからだ。筆者はメディアから取材を受ける時は「その日の気分でピンと来た店を選ぶ」と説明している。東京都内の駅前商店街にあるドトールの店でお客を観察してみると、近所の高齢者、スーツ姿のサラリーマン、女性数人連れなど多彩な客層だ。

一方のスタバは、ドトールに比較して高感度な服装の客も目立つ。店が持つ洗練された雰囲気やメニュー構成によるものだが、逆にそれが苦手な人は一定層いる。退職世代である高齢客の多くはそうだし、現役世代でもそうだ。「スタバになじめないオレはドトール・コメダ派」とネットに書き込む人もいる。何年か前の取材では「ドトールの店は(スタバなどに比べて)おしゃれじゃない」という声があったが、最近は「ドトールで十分でしょう」という空気にもなってきた。