【1】一生賃貸 vs 中古持ち家

今のような局面で不動産は買いなのか

一生賃貸で暮らすのと、中古の持ち家を買うのとでは、どちらが得か。資産価値の面と使い勝手の良しあしの2つで比較してみましょう。

まず資産価値の面でいうと、持ち家を購入して得をするのは、不動産価格が上がると見込まれるとき。バブル期以前に家を買った人は、その後の価格急騰時に売り抜けて、儲けを出すことができました。反対に、今のように不動産価格が下がる局面で持ち家を買うと、さらに値下がりして損をするかもしれません。

例外的に、東京のごく一部、たとえば山手線の内側エリアのように、利便性の高い地域の不動産価格は、上がったり下がったりを繰り返しています。

政府が量的緩和をしてバブルが起き、弾ける。そしてそのツケをまた量的緩和で解消しようとして、バブルを起こして、弾ける。これをまるで株のように繰り返しているのが、2000年代に入ってからの都内の不動産価格の動きです。

ただし、それは東京のごく一部であって、日本全体ではこれから明確に人口が減るわけですから、全体として不動産価格が下がっていくことは間違いありません。そう考えると、経済的には賃貸のほうが得といえる時代がすでにきているのかもしれません。

もし購入するのであれば、安く買えるチャンスは新築より中古のほうが多い。日本では住宅についても減価償却という考え方があり、築年数に比例して価値が下がっていくため、お買い得な物件が出てくるからです。

使い勝手の面でいえば、確かに持ち家は自由に内装を替えたり、楽器を演奏するための防音室をつくったりという希望は、叶えることができます。その一方、賃貸にはライフスタイルに合わせて住み替えが気楽にできる、という大きなメリットがあります。近所に気に食わない人がいたら引っ越せばいいわけです。

ところが持ち家の場合、なかなか引っ越しができない。売るにしても買ってくれる人がすぐ見つかるとは限らないし、売買のときにかかるコストも物件価格の1割程度とバカになりませんから、簡単には引っ越せません。家を購入した後に転勤を命じられ、その間だけでも誰かに貸そうとしても、「戻ってきたらすぐに明け渡す」という契約では家賃が安くなるし、他人が使用する分、家も傷みます。

結局、持ち家で得をすることは簡単ではありません。

(ファイナンシャルプランナー 藤川 太)