平安時代から京都で1200年以上続く企業

創業から200年以上の歴史を持つ企業は世界に5586社(合計41カ国)が存在し、このうち半数以上の3146社は日本に集中しており(2位はドイツの837社、3位のオランダは222社、4位はフランスの196社)、日本には長寿企業が最も多く存在する。

自社のオリジナルエクステリアブランドの「ディーズガーデン」。

その一方、国内で創業し5年後に生存している企業はおよそ8割(82%)、10年後は7割(70%)、15年後は6割(61%)、20年後に生存するのは5割(52%)に過ぎない(中小企業庁『2011年中小企業白書』)。創業して20年が経過すると、実に5割の企業が消滅していることになる。

(株)傳來工房は平安時代初期に「傳來」の銘で創業したと伝えられ、1200年以上の歴史を誇る。同社は遣唐使が大陸文化と共に持ち帰った当時の先端技術「蝋型(ロウガタ)鋳造法」を駆使し、砲金(銅90%、錫10%の合金)や青銅(銅が主で錫を含む合金)を材料に大型仏具の五具足(ごぐそく)と呼ばれる香炉、燭台、花入れを鋳造し京都の各宗派の総本山に納めてきた。

鋳造職人集団として時代の変遷に適応し、第二次大戦後は銅合金からアルミ合金鋳物を中心に建築内外装意匠金属工事や美術工芸分野に事業を展開。同社の代表作としては「皇居二重橋前青銅意匠高欄」「赤坂離宮迎賓館庭園灯」「国立文楽劇場破風」、さらに「BMW本社アルミキャスト外装(ドイツ・ミュンヘン)」なども手掛けている。

全国主要都市のランドマークとなる建築物や都市空間の特注品を長年受託していたが、需要の波が大きく、安定した生産を確保するため、大手エクステリアメーカーの商品開発とOEM生産を、協力企業として受託するようになった。ところが商品開発では同社らしい個性的な企画は採用されず、繰り返される値引き要請により事業収益が悪化。OEM生産が売り上げ全体の6割ほどにまで増えていたため、同社は事業存続の危機に直面した。

当時エクステリア市場に出回っていた住宅用ポストや門扉などは、メーカーシールを剥がせばどれも違いがない、没個性の商品しか存在していなかった。またこだわりを持って設計施工する造園会社やデザイン提案型エクステリア専門店が採用するエクステリア商品も、ホームセンターで安売り販売されている商品群と大差なかった。どこにでもあり、どこでも買える製品がエクステリア市場を席捲していた時代だった。

そこで同社は、大手エクステリアメーカーと明確に差別化するため、暮らしの質とデザインにこだわりを持つ30~50代の女性たちにフォーカスし、彼女たちが求める「上質で洒落たガーデンエクステリア商品群」を商品開発テーマに設定し、当時国内には存在していなかった南欧風(プロバンス風)などの洋風住宅や洋風庭園に調和し、同社の強みが発揮できるデザイン性と造形性の高い商品に特化した開発に着手した。