バスケットボールは時間のスポーツ!

辻秀一・スポーツドクター

【三宅義和・イーオン社長】今回はスポーツドクターとして有名な辻秀一先生に来ていただきました。辻先生といえば、ベストセラーになった『スラムダンク勝利学』の著者としても知られています。なんと発行部数は、40万部近くだそうです。

現在では心理学をベースに、パフォーマンスを最適・最大化する心の状態「Flow」を生み出すための独自理論「辻メソッド」で、メンタルトレーニングを展開されています。多くのアスリートやビジネスマンパーソンからに支持を得て、多数の企業の研修やトレーニングも受け持たれています。

また近年では、プロバスケットボールチーム「東京エクセレンス」を創設され、ファウンダーでもいらっしゃる。そこでまず、バスケットの話から入りたいと思いますが、先生がバスケットに興味を持たれたきっかけは何ですか。

【辻秀一・スポーツドクター】実は、小学生の頃は剣道をやっていました。それから、中高一貫校に進んだのですが、そこには剣道部はありませんでした。「どうしようか」と迷ったときに、医者である父から学生時代はバスケットに没頭していたという話を聞いたのです。剣道は個人スポーツでしたが、何かチームスポーツをしたいなという気持ちもあり、バスケットボールを始めました。

【三宅】大学時代にはインカレに出場されたそうですね。北海道大学医学部を選ばれたのも、バスケットが強いからだと聞きましたが。

【辻】うちは代々、医者の家系で親戚にも医者しかいません。高校時代は京都大学の工学部に憧れたのですが、最終的には医学部に行くことにしました。バスケットの強い国立大学というと、北大と金沢大学と筑波大学でした。でも、筑波大学はインターハイ常連の2メートル級の連中が入部してくる。スタメンになりやすそうな北大に決めました(笑)。

【三宅】それほどまでに先生を惹き付けるバスケットの魅力とは何なのでしょうか。

【辻】1つには、チーム5人という面白さです。5人より多くなると個が弱くなるという考えがあります。でも、5人だと誰も休めません。おそらく、人間の指が5本なのには何か理由があるからではないでしょうか。仮に小指が1本なくなるだけで、握力は半分ぐらいになるそうです。

2つ目として、シュートが決まっても、ゲームが止まらない唯一のスポーツなんです。ラグビーも、野球も、サッカーも、点が入るといったんプレーが止まる。一方、バスケットボールは人生と同じで、停滞を許しません。

3つ目は、バスケットボールはまさに時間のスポーツで、3秒とか5秒とか24秒とか1分とか、全部時間で区切られているんです。これも人間の活動には大切なことで、人間の営みに近いということも魅力ですね。無駄のない生き方に通じると思っています。