なぜ“泡沫・暴言候補”トランプは大統領選に勝利できたのか? この連載では、「現代マーケティングの父」フィリップ・コトラーのフレームワークに当てはめながら、トランプの選挙マーケティングについて解説する。今回はトランプが熱烈な支持者を生んだ“物語術”について考える。

「新時代のマーケティング」で大統領選に勝つ!

「現代マーケティングの父」と呼ばれ政治マーケティングにも影響を与えるフィリップ・コトラーが、新時代のマーケティングとして提唱しているのが“マーケティング3.0”という概念だ。コトラーは世の中に変化をもたらすミッションの重要性を、以下のような言葉で説いている。

「ブランドが変化をもたらすとき、消費者は無意識のうちに当該ブランドを日々の暮らしの一部として受け入れる」
「変化を生み出すことこそ成熟市場に対する最高のマーケティング」

コトラーは、ブランディングの展開に際しても、世の中に変化をもたらすミッションを中核に据えたミッションブランディングが重要であると指摘しているのだ。

コトラーはさらに消費者に対して企業や製品のミッションをマーケティングするためには、企業は変化というミッションを掲げ、それを軸に感動的なストーリーを築き、ミッションの達成に消費者を参加させる必要があるとしている。また、その際に「普通ではないビジネス」「人々を感動させるストーリー」「顧客エンパワーメント」の3原則が不可欠であると指摘している。

マーケティング3.0は“変化”をキーワードとするが、同じように“変化”をキーワードとして選挙戦を展開したトランプの政治マーケティングは、このマーケティング3.0のフレームワークが見事に当てはまるのだ。

図は、トランプの選挙戦における政治マーケティングをマーケティング3.0のフレームワークに落とし込んでみたものである。

◆普通ではないビジネス:変化をもたらす、強さを取り戻す、過激なまでに明快なメッセージ
◆人々を感動させるストーリー:「チャレンジ型ストーリー」を採用し、“泡沫”候補者だったトランプが熱烈な支持者と一緒に大統領選挙を勝ち抜くストーリーや現状を打破し変革をもたらすストーリーを展開
◆顧客エンパワーメント:有権者を巻き込むソーシャルメディア展開、地上戦×ソーシャルメディアでのO2O展開、有権者を“共感→参加→シェア”させるエンパワーメントを展開