処理業務に忙殺されたら思考停止する

柴田昌治 スコラ・コンサルト プロセスデザイナー代表

仕事には必ず「意味・目的・価値」があります。これまで日本のビジネスパーソンは、そのことをあまり意識しなかったかもしれません。なぜなら、仕事は会社、とりわけ上司から与えられることが多かったからです。その段取りもおおむね決まっていました。大半の人は「いかにさばくか」しか考えなくてもすんだのです。

しかし、現実には多くの人たちが自分のキャパシティを超える業務を与えられ、「目の前の仕事をこなさないことには、どうにもならない」という切羽詰まった状況に追い込まれています。そうなると、責任感の強い人ほど行き場を見失い、心を病むことも少なくありません。最近の痛ましい例では、電通の新人女性社員の自殺がありました。

たとえ、そこまでいかなくても、残業は増える一方でしょう。そして、夜遅くまでオフィスで残業している人が、その間に考え抜いて仕事をしているかといえば、残念ながらそうではないはずです。むしろ、作業的な処理業務に忙殺され、思考停止に陥ってしまう。しかも、それが慢性化すると「考え抜く習慣」さえ失ってしまいます。

このように日本企業は、依然として多くの課題を抱えています。これは長い歴史のなかで、定着してしまったものです。物事を正確に把握して自分の頭で客観的に判断しようとするのではなく、「上司の的を当てに行く」というのもそうです。つまり「上司が好む答え」を探るクセがついている。そして、そのほうが上司からの評価も高かったことも事実です。