TPPからの撤退はある?

米共和党の大統領候補に指名されてからも暴言癖が収まらず、なにかと物議をかもしているドナルド・トランプ氏。しかし政策面では、指名受諾にあたってそれなりの譲歩をしていることがわかる。

大統領選挙における事実上の公約となる党綱領では、これまでトランプ氏が主張してきた過激な内容がほとんど骨抜きにされ、現実的な路線に修正された(表参照)。

とはいえ、トランプ氏が従来の候補者と全く異なる主張をしてきたのは事実であり、それが同氏に対する強い支持にもつながっている。大統領に就任して、最初の半年間が勝負ともいわれる。就任直後にインパクトのある政策を打ち出してくる可能性は高く、備えが必要である状況に変わりはない。

トランプ氏は当初、TPP(環太平洋パートナーシップ)協定やNAFTA(北米自由貿易協定)について否定的な見解を示していた。しかし、実際に採択された党綱領では「国益に反する貿易協定には反対する」という曖昧な言い回しに修正された。

現在の米国ではメキシコなしに生活することなど不可能である。米国人は水のようにビールを飲むが、その多くはメキシコ産だ。米国人が安価にビールを大量消費できるのは、外国であることを意識せずにメキシコと貿易できるNAFTAが存在しているからであり、トランプ氏もこうした現実を受け入れたものと思われる。

ただTPPについては、オバマ政権末期に合意されたことを問題視する内容が綱領に盛り込まれた。米国がTPPから完全撤退するのかまではわからないが、何らかの修正が加えられる可能性は高い。関税撤廃スケジュールや、米国企業の日本進出条件などをめぐって日本側が不利になる要求が飛び出してくるかもしれない。TPPの影響を受けやすい業種で働いている人は要注意である。