法定利率が高いとトラブルが長引く?

民法改正で、法定利率の引き下げが検討されている。法定利率とは、契約時に当事者間で金利(約定利率)を定めなかったときに適用される金利。たとえば借金返済の期限を過ぎるなど、債務不履行によって遅延損害金が発生したが約定利率を決めていなかった場合や、不法行為によって損害賠償金が発生した場合などに適用される。

民事法定利率は現状で年5%(商事法定利率は6%)。法務省の民法改正案では、まず法定利率を3%に引き下げて、その後は3年ごとに、過去5年の市場金利を踏まえて1%刻みで見直すとされている。

日銀がマイナス金利を導入して、いまや市場金利は限りなくゼロに近い。法定利率とのギャップが今回の改正案の検討につながったが、法定利率が市場金利より高いのはあたりまえという声もある。長谷川裕雅弁護士は、こう解説する。

「法定利率には、債務履行を遅らせたことに対する制裁の意味合いがあります。法定利率が低ければ、遅延損害金もたいしたことはない、それならば約束を反故にしようという考えにもなりかねません」

もっとも、法定利率が高すぎると別のモラルハザードを引き起こす可能性がある。遅延損害金の支払いが遅れれば、それだけ年5%の適用期間が長くなり、金額が膨らんでいく。それゆえ債権者がわざと裁判を引き延ばしたりすることも考えられる。

「実際、消費者金融への過払い金請求では、あえて和解に応じず訴訟に持ち込んだケースもありました。和解せずに裁判になれば請求が退けられるリスクもありますが、過払い金請求や未払い残業代請求のような“勝ち筋”の事案では、債権が消滅する時効ぎりぎりのタイミングで提訴したほうが、債権者は得をすることになります」

法定利率は、低すぎても高すぎてもダメなのだ。