眼科疾患の中で白内障とともに認知度が高いのが、名称の白が緑に変化した緑内障。視野が欠けていく病気で、最悪のケースでは失明に――。現状では完治する方法はない。だからこそ、早期発見、早期治療が大事で、それによって進行が抑えられるのである。

視野が損なわれ失明に結びつく緑内障――。物体はカメラのレンズの役割をする角膜や水晶体を通って眼球の奥、フィルムにあたる網膜に写る。網膜に写った物体は光の情報として視神経を通って脳に伝達され、そこで初めてものを見たと認識される。

緑内障は光の情報が視神経を通って脳へ伝達されるとき、視神経に障害が起こるために、視野が欠ける疾患である。

治療の基本は、やはり薬物療法。点眼薬を使っての眼圧コントロール、つまり、眼圧を下げるのである。その点眼薬が約10年ぶりに新しくなった。それは、この4月から6月の間に、配合点眼薬が3剤も登場。ファイザーの「ザラカム」、日本アルコンの「デュオトラバ」、万有製薬の「コソプト」である。

最も広く使われているのは、眼球内の血液である房水の排出口を広げる働きのあるプロスタグランジン関連薬(PG製剤)。房水の排出は2本の流出路で行われている。1本目が「経シュレム管流出路」、2本目が「ぶどう膜強膜流出路」。1本目が排出の85%を担い、眼圧に依存して流出している。2本目は排出の15%を担い、眼圧とは関係なく流出している。2本目の流出路が広くなれば、日本人に多い眼圧が正常にもかかわらず視野欠損する、正常眼圧緑内障の人にも効果的である。

点眼薬は作用によって大きく2つに分けられる。ひとつは房水の流出を促す房水排出促進薬。

これにはPG製剤を筆頭にα1遮断薬、副交感神経刺激薬がある。もうひとつは、房水の作られるのを抑える房水産出量抑制薬。これにはβ遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬(CAI)がある。

目の状態等によって点眼薬は選ばれるが、一般的な選択順は(1)PG製剤、(2)β遮断薬、(3)CAIである。(1)に(2)を加え、さらに(3)を加える。つまり、緑内障患者は多いと点眼薬を3剤使うことになる。

3剤となるといろいろ問題も起きてくる。高齢者で多いのが点眼回数を間違えたりといったケース。そこで登場したのがザラカム、デュオトラバ、コソプトの3剤の配合点眼薬である。これで3剤使っていた人は2剤に、2剤だった人の中には1剤ですむ人も出てくる。

さらに、点眼薬に入っている防腐剤は角膜上皮への傷害作用があるので、できれば防腐剤は少ないほうがいい。配合点眼薬であれば2剤が1剤になっているので、点眼する防腐剤量は半分になる。患者にとって配合点眼薬はメリットが多いといえるだろう。

【生活習慣のワンポイント】

緑内障との関係がわかっているのは、生活習慣ではないが、「眼圧」と「家族歴」。

日本人の緑内障では正常眼圧緑内障が多いけれど、その場合でも眼圧を下げる。眼圧の高い人は発症率がアップするので、それがわかっていれば早期に対応を――。

家族歴は親や兄弟に緑内障の人がいるケース。この場合は緑内障になりやすいことがわかっている。さらに、「高度近視」「遠視」は緑内障になりやすい。

人間は両眼でものを見るので、一方の眼に問題が生じても、もう一方の眼で補ってしまうため、視野の欠損になかなか気付きにくいという事実を認識しておくべきだろう。

基本的には早期発見が非常に重要なので、かかりつけの眼科を持ち、定期的にチェックを受けることを生活習慣にするべきである。