極限までモノや情報、人付き合いを減らす「ミニマリスト」と呼ばれる人たちが増えているという。「捨てる」ことでどんな効果があるのか。達人に聞く。

29歳でマッキンゼー最年少役員に

テレビやインターネットのニュースは見ない、新聞や本も読まない、SNSもしない――情報が氾濫する世の中だからこそ並木裕太氏は意識的に情報を遮断している。

並木裕太●フィールドマネージメント社長。1977年、ベルギー生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。ペンシルベニア大学ウォートン校でMBA取得。2000年マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社に入社後、09年に独立。16年3月からJリーグの理事に就任した。

並木氏は経営コンサルタントとして2000年にマッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社に入社。29歳のときに最年少でアソシエイトパートナー(役員)に昇進した。その後、09年に独立し、フィールドマネージメントの代表を務める。これまで手がけた案件は数知れず。日本航空やソニー、日本交通などの企業経営のコンサルティングはもちろん、プロ野球の北海道日本ハムファイターズやJリーグの湘南ベルマーレといったプロチームの運営、パ・リーグやJリーグといったスポーツのリーグ全体を見渡したアドバイスまで幅広い分野に携わり、結果を残してきた。2015年には、MBAを取得したペンシルべニア大学ウォートン校の「40 under 40(40歳以下の卒業生で最も注目すべき40人)」にも、日本人で唯一選出された。

順風満帆に見えるコンサルタント人生だが、はじめは苦労したという。

「マッキンゼーに入社して3、4年は劣等生でした。誰からも見向きもされなかった」

なんとか成果を出そうと、マッキンゼーのルール通りに情報を集め、外部との打ち合わせ前の「インタビューガイド」、打ち合わせ後の「インタビューノート」など膨大な資料も作った。しかし、評価は上がらない。

価値のある、オリジナリティのあるアイデアを思いつくにはどうすればいいか。考えついたのは、情報の集め方を変えることだった。

「誰でも得られる情報からは誰でも思いつくアイデアしか浮かばない。希少価値の高い情報をベースに考えれば、自ずと斬新なアイデアになります。たとえば、日経新聞を読んでいる人はごまんといるけれど、その道のプロから話を聞いた人は限られる。そこで、担当していたコンビニ業界に精通する人物を探しました。伝説の店長やコンビニ出身の経営コンサルタントなどを探し、会いにいったんです。若くて、人に会うしか活路がなかったんですが、結果的には一番有効な手段でした」