「結果を出している人」はどのように考えているのか? C ChannelやLINEの社長を務めた森川亮さんに、事業ヴィジョンの描き方を聞きます。

スタートアップ企業のみならず、大企業でも新規事業に取り組む会社は増えている。しかし事業の将来についてヴィジョンをどのように描くかは、最も苦労するところではないだろうか。

縦型動画というフォーマットで、女子向け動画ファッションマガジンという、先駆的なサービス「C Channel」を提供するC Channel株式会社の森川亮社長は、その前にLINE社長として同サービスを開発し、成功させた人物だ。森川氏は、どうやって未来を予測し、事業ヴィジョンを描いているのか。その考え方を伺った。

“今強い人”は新しいものを軽視しがち

C Channel社長・森川亮氏
――もともと森川さんは日本テレビの出身ですが、スマートフォン向け動画メディアを始めようという事業ヴィジョンを思いついたのは、どういういきさつだったのでしょうか。

【森川】メディア業界は今のままではまずいと思っています。最近で言うと、悪いことばかり配信して、それを受けとる若い人たちが自信を無くすとか。たとえば社長はいろいろいるのに、悪い社長ばかりメディアに出ていると、「社長になりたくないから起業したくない」と若い人が思ったり……そういう空気があったので、もう少し(メディア業界を)ポジティブなメッセージを発信する業界に変えたいと思ったんです。

それを具現化するために何が必要なのかを落とし込んだとき、変わるためには、テレビに代わるようなデジタルのメディアを作らなきゃいけない。デジタルメディアの状況が今は文字から写真、写真から動画になっている。だから動画メディアで変えようと考えたわけです。

――森川さんは、日テレ時代からインターネットの可能性を感じていたと思いますが、どういうふうに考えていましたか。

【森川】昔、テレビが生まれる前は映画が強くて、新しくテレビが出てきたときに、映画業界の人は結構馬鹿にしていた。今強い人たちは新しいものを馬鹿にする傾向があるのです。テレビの人もインターネットを馬鹿にしていたけれど、インターネットが出てきてから多くの人に使われるまでのスピード感がものすごかったので、「これは間違いなく伸びるだろうな」とは思いましたね。

計算してみればわかると思うんですが、ゼロから始まってここまで伸びたことを考えると、10年後にどうなっているかはある程度想定できるわけです。スマートフォンが出たときもそうだったんですが、なぜか皆さんあまり将来像を見たがらない。高齢化問題もそうですし、計算すれば簡単に出る話をなぜ皆さんは否定するのか。むしろそれが分からない。でも一般的にはそういうことが多いですよね。

――人口問題などと同じく、ある程度は予測できる未来ということですね。しかし新しいものはたくさんあります。流行るものもあれば、消えていくものもありますが、どうやって見極めているのですか。

【森川】まずは伸びの角度の問題です。伸びの角度が高ければ、もっと伸びる可能性がありますよね。低ければ低くしか伸びないかもしれないですよね。でも角度が高くても、その伸びている理由が一部の人しか使わないような、たとえば秋葉原のオタクが買ったから伸びていたとすると、オタクの人数を考えたら、将来の伸びは厳しいかなという読みになります。でも、普通の人たちが使って伸びたとしたらどんどん伸びる、そういうことです。