手帳のウイークリーに詰まった字は、どの日も4行で統一されていた。これはスポーツトレーナーとして世界を股にかけて活躍する森本貴義さんが、10年間もつけている4行日記である。

スポーツトレーナー 森本貴義氏●リーチ専務。2004年から12年までシアトル・マリナーズに勤務。著書に『プロフェッショナルの習慣力』。

「トレーナーはクライアントについて考える時間が長くて、自分のことを忘れがち。でも自身を客観視しないかぎり、仕事で成長するのは難しいと思います。そこで役立つのが、1日の行動から気づきを発見する4行日記です」

4行日記とは、「今日起きた事実」「気づき」「気づきから得た教訓」「宣言」を1日1行ずつ書いていく日記だ。森本流のルールがいくつかある。まずその日のうちに書くこと。そのため普段から何を書くか漠然と考え、帰宅したらすぐに取りかかる。しかし「事実から気づきは連動していてパッとひらめくけれど、教訓が難しい」というように考えても何も出てこないときも。そこで書く時間は5分以内と定め、何も浮かばないときは書かないと割り切り、3行で終わらせる。逆に気づきや教訓がいくつもあるときは、自分の中で一番響いたことだけ記して4行をキープ。継続を一番の目的にしているから、ハードルを高く設定しないのだ。

4行日記は、日記本来の役割である「思い出す」点でも効力を発揮する。

「取り組む仕事が日々違うと、ひとつの仕事からしばらく離れて戻ったとき、やり方を忘れてしまうことがあります。そのとき、日記のキーワードを見直すのがもっとも効果的。詳しく書いていなくても言葉がスイッチになって、アプローチや感情を思い出せるんですよ」

森本さんによれば、同じ時間に球場入りし、バッターボックスに入る前に同じ動作をするイチロー選手のように、結果を出すスポーツ選手は日々のルーティンを大事にするという。変わらない習慣をつくることで平常心が磨かれ、外部要因が変わっても落ち着いて対処できるようになるからだ。4行日記もルーティンとして有効活用できそうだが、3日坊主で終わらせないためにはどうすればよいのか。

「物事を諦める人って、成功した自分のイメージがないんですよ。だから『日記を続けて気づきが増えたことで仕事も広がる』と想像して、ワクワクすることが大切ですね。僕も高校の3年間、部活で日記を書かされて、最初は面倒くさくてイヤだったのが、続けることでよさがわかった。習慣化とは、そういうものです」