名古屋発祥の喫茶店「コメダ珈琲店」が全国で700店を超えた。喫茶店数が減少するなか、コメダ珈琲店が店舗数を増やせる理由とは。

モーニングサービスで知られる名古屋発祥の喫茶店「コメダ珈琲店」が全国で700店を超えました。各地域の初出店場所で社会的ブームといえる現象が起きており、2016年8月10日に開業した「東札幌5条店」(北海道札幌市白石区)では60人以上の行列ができました。
国内の喫茶店(カフェを含む)の店舗数は1981年の15万4630店をピークに減り続け、最新の調査(2014年)では6万9977店となっています(総務省統計局「経済センサス」調査)。そんな時代に、店舗数1位と2位のスターバックスやドトールとは違う「昭和型喫茶店」のコメダが、なぜ店舗数を増やせるのか。本連載ではその秘密を探ります。

「東札幌5条店」では60人以上の行列ができた。(撮影=本田匡)

同じスポーツ新聞を「9部」も置く理由

筆者はこれまで、日本のカフェや喫茶店を経営や生活文化の視点で分析してきました。その視点でコメダ人気を見ると、「店で思い思いに過ごしたい」消費者に寄り添った結果だと思います。全店舗数の98%を占めるFC(フランチャイズチェーン)店の例で紹介しましょう。

愛知県半田市の「コメダ珈琲店 半田やなべ店」は来年で開業20年を迎えます。人口12万人弱の半田市は知多半島の中心地ですが、店は繁華街から離れた場所。それでも1日に約600人も来店します。筆者が訪れた平日11時前も10人ほどの人が座席を空くのを待っていました。新オープンの店でないのに、なぜ、そこまで人気なのでしょうか?

「当店はお客さんの居心地を重視してきました。コメダらしさでこだわることは『スピード』『仕込み』『段取り』です。お客さんが来店されたら、大きな声で『いらっしゃいませ』と言い、冷たい水と温かいおしぼりを出す。ご注文を受けたら、温かいメニューは温かいうちに、冷たいメニューも冷たいうちにすぐ出してお客さんを待たせない。そうした接客を地道に続けてきました」(同店を経営する有限会社ウチヤマ代表取締役・内山清さん)

全国各地のコメダ珈琲店には読み放題の新聞や雑誌も置かれています。主要な新聞・雑誌を揃えつつ、店の立地によってその構成は変わるそうです。特に地域事情が出るのはスポーツ新聞で、半田やなべ店では、同じ中日スポーツを何と9部も置いています。

「中高年の常連客も多く、モーニングを食べながら新聞や雑誌を読むのを楽しみにしている方も多い。プロ野球の中日ドラゴンズの地元ですから、中日スポーツが取り合いになるほどです。お客さんの希望をかなえるうちに9部を揃えるようになったのです」(同)