ビジネスマンであれば、企画書を作成するため、データ集めに駆け回った経験があるはず。リサーチャーの喜多あおいさんは、TV番組制作の仕事が中心だが、広告代理店のCM制作、一般企業のプロジェクトといった、TV局以外の仕事に参加することも多いそうだ。といっても、「TV番組制作でも、ビジネスでも、リサーチの基本は同じです」と、喜多さんは断言する。

「私はプロジェクトに関係ありそうな情報をすべて網羅してからそれらを分類し、価値ある情報に絞り込んで番組や企業に情報提供します。現在ではインターネットという便利なツールが普及していますが、最初からネットでリサーチするのはお勧めできません。検索ワードを選んだ段階で、すでに自分の思い込みが入っているからです。そうすると、集めたデータが偏ったものになり、リサーチが失敗する確率が高くなります」

喜多さんはリサーチを進める際に必ず、(1)書籍、(2)新聞、(3)雑誌、(4)ネット、(5)識者の順番で、情報源に当たる。それには明確な理由がある。

「書籍を最初に読むのは、テーマの切り口を見つけるのと、テーマに関する教科書として基礎知識を得るためです。書籍はそれぞれのテーマに関する情報を、その道の専門家が考察しながら体系的にまとめています。また、責任を持って有料で提供しており、信頼性が高く、価値ある情報だといえます。テーマについてどう理解し、掘り下げていったらいいのか、コンパスの役割を果たしてくれるのです」

次に活用するのは新聞。新聞の情報も、編集に携わる多数の人のチェックを経ており、信頼性が高い。喜多さんは毎日、全ページに目を通す。

「書籍は制作に時間がかかるのでタイムラグが生じ、最新情報が得られない。それをカバーするために、新聞のコンテンポラリーな情報が欠かせません」と喜多さんはいう。また、新聞は各紙の主義主張が明確なので、複数紙を読み比べることで、1つのテーマについて多面的な見方を身につけられる利点もある。