選挙で勝つには「闘う姿勢」と政治的な「色」が必要だ

今、トランプ氏がなぜ勝ったのかの分析が花盛りだ。ラストベルト地帯(錆びついた工業地帯=アメリカ中西部から一部大西洋岸に至る、衰退したかつての重工業地帯)を制したとか、白人労働者たちの怒りの声を吸収したとか、クリントン氏が黒人票を意外に吸収しきれなかったとか。

こんなのを投票所の出口調査の分析でやっても意味がない。

というのも、そもそも世論調査が全く効かなかったのが今回の大統領選挙だ。それなのに、またも投票所の出口調査という世論調査で分析することに、どれだけの意味があるのか? 政治評論家気取りではなく、選挙を経験した者、しかも真に勝つか負けるか、生きるか死ぬかの選挙をやり続けてきた者であれば、巷の世論調査がどれだけ当てにならないかは分かっている。

特に選挙結果が事前の世論調査とは大きく違うものになった場合、出口調査にはほとんど意味がない。論理的に考えれば分かるはずなのにね。

にもかかわらず、世論調査や出口調査、さらに一番意味のない学者や研究者のプチ世論調査を基に、あーだーこーだと選挙結果を分析している者が多いけど、有権者の投票行動はそんな単純なものじゃない。

しかし結論は極めて簡明だ。結局のところ、政権与党であれば、これまで多くの有権者に満足を与える政治をやってきたならば勝ち。多くの有権者がこれまでの政治に不満を抱いていたのであれば、政権与党の負け、野党の勝ち。

選挙ってそれだけなんだよね。そして満足の中身は様々なものがある。雇用、給付金、補助金、社会保障、税制、国家としてのプライド……。どれか一つで良いわけではない。結局のところ有権者の満足とは総合的なものとしか言いようがないんだよね。

とにかくトランプ氏はアメリカ国民の多くの不満をすくいあげた。オバマ大統領はアメリカ国民の多くに満足を与えることができなかった。このように大きくとらえないといけない。

そしてやはり有権者の応援を受けるには、有権者に満足をもたらすことに加え、候補者自身が「強い大きなものと闘う姿勢」を示すことが重要になる。いいか悪いかは別として選挙とはそういうものであり、これが現実だ。僕の選挙や僕が代表だった当時の大阪維新の会の選挙はそこを意識していた。

過日の小池百合子さんが圧勝した東京都知事選挙を見てよ。あの時もそうだったし、今回のアメリカ大統領選挙もそう。「闘っていた」のは明らかにトランプ氏だったね。

その時に、最も重要になるのが候補者の「色」だ。有権者は、候補者の個別政策を政治評論家のようには分析しない。有権者はそこまで暇じゃない。候補者が言っていることを大きくまとめながら、候補者の「色」を読み取るんだ。

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.32(11月22日配信)からの引用です。事前予想に反し「トランプ氏勝利」という衝撃の結果をもたらしたアメリカ大統領選挙については、現地取材をもとにメールマガジンで今後たっぷり論じていきます!!

(撮影=市来朋久)
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