住宅ローンを残したまま夫が失踪すると……

住宅ローンは滞納期間が3~6カ月を超えると、どうなるかご存知だろうか。

期限の利益喪失(分割返済できる利益)となり、銀行などの金融機関や保証会社からローン残金全額の一括請求の督促が届く。

『離婚とお金 どうなる? 住宅ローン!』(高橋愛子著・プレジデント社)

問題はなぜ滞納しているかだが、原因はさまざま。債務者である夫が行方不明になる、というケースもある。

そうなると、次の展開は?

連帯保証人である妻が支払いをする義務が生じる。妻が働いていれば、なんとか返済のあてもあるが、収入がなければ青ざめるだろう。しかも、債務者(夫)が行方不明になって困ることはこればかりではない。共有名義になっている不動産は「共有する人」の同意がないと売却することができないのである。これ、一瞬なんのことか意味がわからないかもしれないが、きわめてインパクト大の事実だ。

M子さん(30代後半)は専業主婦。千葉県内に3500万円でマンションを購入したのは15年前のことだった。当時、夫は中堅企業に勤務するサラリーマンで収入も安定していた。とはいえ、まだ若かったので頭金が少なく、夫の母親の家の一部を共同担保にして住宅ローンを借りたのだった。夫はいい夫であり、いい父親。夫婦間のもめごともなく、どこから見ても幸せな家庭に見えたに違いない。

ところが、マンションを購入してわずか2年後、夫は会社勤めを辞めてIT関連のベンチャー企業を立ち上げた。

M子さんは安定した生活が崩れるのではと不安を抱き、反対したが夫の意志は固かった。夫はやる気に燃え、事業計画もきちんとしていたのでM子さんも納得し、皆で夫の新しい船出を応援した。

夫の事業は、最初は利益が出ていたが、それでも会社員時代に比べると収入は激減。そのうちに事業が行き詰まってしまったのだ。借金も増え、住宅ローンの返済も滞るようになってしまい、夫婦仲も悪化。夫が家に帰らない日が次第に増えていった。

状況は日に日に悪くなるばかりで、ついに夫は失踪状態に。あまりに帰宅しない日が続いたので捜索願いを出したのだが、警察もお手上げ。とうとう行方がわからなくなってしまったのだ。